執事シリーズ
□タオちゃんの執事A
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「ねぇセフナ、タオとクリスさんってさぁ…何であんなにラブラブなんだろうね」
「カイ、急にどおしたの?」
「だってあの2人、まるで恋人同士みたいじゃん」
「あぁ、恋人同士っていうか、婚約者だし」
「へ?タオは名家の一人息子なのに、執事と結婚なんて有り得んの?」
「だってクリスさんって、王子様だし…」
「いくら見た目が王子様みたいで優秀だからって…」
「いや、そういう事じゃなくって、本当に王子様なの!隣の国の!」
「……。
えーーーーーーーーー!!!」
〜語り手: クリス〜
カイ様はご存じなかったみたいですが、セフン様の仰る通り、実は私、本当に隣国では王子という身分でございます。
ただ、王子と申しましても、私は第4王子でございますので、将来王として即位する可能性は殆どないと思われます。
とは言え、仮にも王族の一員である私が、なぜ執事としてタオ様に仕えておりますのか…
それをこれから、お話しさせて頂きたいと思います。
ここからは、執事のクリスではなく、クリス王子としての口調に変えさせていただきますね。
まず、タオとの結婚についてですが、これは親同士が決めた、言わば政略結婚なのです。
我が国は小国ながら、政治、経済が安定しているので、諸外国との貿易も盛んに行われています。
そのため、諸外国との繋がりを強くするため、その国の有力者と婚姻関係を結ぶことも、珍しくないのです。
隣国のファン家の奥様は、学生時代に私の母の親友だったということもあり、息子同士を結婚させたいという事で、一番タオと年が近かった私が選ばれました。
一人息子で、親たちに甘やかされ、何不自由なく育ったタオは、きっとワガママでどうしようもないやつに違いない…と、それを押し付けられた私は、アンラッキーだな…と、初めは不満に思っていました。
その後、正式に婚約する前に、両家の顔合わせをする事になり、ファン親子を王宮に招きました。
自室を出て、顔合わせをする応接の間に向かう途中、中庭で遊んでいる少年がいるので、あの子がタオかな…と思って様子を見ていたら、向こうも私に気づき、こちらに近づいて来ました。
「あの…クリス王子ですか?」と、小首を傾げながら聞いてきたので
「そうだよ。」と言うと、
パーッと顔を輝かせて
「ぼくの王子様だ!」と言いながら、私の腰辺りにギューッと抱きついてきました。
か…可愛い…
それがタオの第一印象でした。
何だか胸がキュンキュンして、ゾワゾワして、ドキドキしました。
タオは、会う前にイメージしていた姿とは真逆で、親の愛を一身に受け、何不自由なく育った彼は、穢れを知らない、純粋で素直で愛らしい子供でした。
私は、ひと目でタオが大好きになりました。
応接の間での顔合わせの時には、タオは子猫のように私に纏わりついて、私はそんなタオの頭や肩をずっと撫でていました。
そんな2人の睦まじい様子に両親たちも大満足で、正式に婚約が取り決めとなりました。
婚約したと言っても、私は高校生で、タオはまだ小学生です。
お互い学校にも通っているし、国も違うし、会えるのは年に1〜2回程度…
初めて会った時には、まだあどけない子供だったタオが、会う度にどんどん美しい青年へと成長している…
あぁ、タオがますます美しく成長していく過程を、ずっと近くで見守りたい…
大学を卒業後、国を離れてタオの父の経営する会社に入社し、事業を手伝う事になっています。
そうなれば一緒に過ごせる時間が増えますが…
とてもそれまで待ちきれず、大学3年から、タオの国にある大学に編入し、ファン家に居候させてもらい、そこから大学に通うことにしました。
その頃、タオも中学に入学したので、私は大学の勉強の傍ら、タオの家庭教師も引き受けました。
少しでも一緒の時間を過ごしたいから…
それなのに、私が勉強を教えるために部屋に行くと、タオは全然勉強してくれなくて困ります。
テキストの内容を説明しているのに、机に肘をついて、私の顔ばかり見ているのです。
「タオ…私の顔ばかり見ていないで、ちゃんと勉強してくれないと、私は家庭教師をクビになってしまうよ」
「大丈夫!勉強は、自分でちゃんとやっているもん」
「じゃあ、家庭教師なんて必要ないじゃないか」
「ぼくに必要なのは、クリス王子と一緒にいる時間なの…」
そう言って、私の腕にしがみついてきました。
今まで会えなかった時間は、タオも私と同じように寂しく思っていたようです。
「クリス王子が、予定よりも早く来てくれて、ほんとに嬉しい!」
と言って、抱きついてきました。
私からも抱きしめ返して、しばらく抱き合った後…
私達は初めてのキスをしました。
挨拶のキスは何度もしています。
でも、恋人同士の熱いキスは、これが初めてです。
何度も何度も角度を変えて唇を重ね、十分に唇の弾力を味わい、私の唇でタオの唇をそっと食む
チロチロっと唇を舌で突つき、閉じた唇にそっと舌を差し込むと、恐る恐るという感じに唇が開かれる
その唇の内側を、ぐるりと舐め回すと、タオが堪らず溜息を漏らす
一度離れてタオの顔を見つめると、目をうるうると潤ませて、もっと欲しいとキスをねだる…
再び唇を重ね、最後に鼻の頭にチュッとしてやると、まだまだ足りなそうな顔をするので、人差し指でタオの唇をチョンと突いて、おしまい、と言うと、恥ずかしそうに、
「ぼくの王子様…」
と呟いて、また抱きついてきました。
私の腕の中で甘えるタオが、可愛くて仕方ありません。
もう愛しさで胸がいっぱいです…
愛し過ぎて、涙が出そうなくらいです。
それからは、家庭教師の時間は、タオの勉強部屋で、誰の目も気にせずに2人きりで甘いひとときを過ごす時間になりました。
最後まではしませんでしたが、だいぶ際どい事はしていましたけどね。