執事シリーズ

□フナたんと執事
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フナたんのお父さんは有名な映画監督で、お母さんは女優ですが、今は時々CMなどに出演する程度で、お仕事はセーブしています。
お母さんは、お父さんよりかなり年下で、フナたんと並ぶと姉弟みたいに見えるくらい可愛い人です。

そんな両親から愛情たっぷりに育てられ、フナたんは、とっても穏やかでマイペースな性格に育ちました。
そして目下、同じクラスのタオちゃんLOVEな毎日です。(片思い)


執事のチャニョルは、元々役者を志望していて、フナたんのお父さんの映画のオーディションを受けに来ていました。
ところが、何をどう間違えたのか、映画のオーディションではなく、フナたんの執事の面接会場の方に行ってしまい、そこで何故かお父さんに気に入られて、資格もないのにフナたんの執事に選ばれてしまったのです。

チャニョルも、執事の経験は芸の肥やしになるかも!とか、上手くすれば業界にコネが作れるかも!など下心たっぷりでしたが、頑張って勉強して、無事に執事試験にも合格し、現在に至るわけです。
そして、フナたんの高校の始業式でクリスと会い、その美しさと、執事としての完璧な身のこなしや隙の無さを目の当たりにし、同じ執事としてリスペクトしています。



そんなフナお坊ちゃまと、執事チャニョルのお話し



朝の登校前

「バッテリー、よし、SDカード、よし」
毎朝恒例の、チャニョルの指さし確認が行われます。
そこには、一眼レフカメラとコンパクトカメラ、ムービーなど、撮影グッズが並んでいます。
これらをカバンに入れ、フナたんと車に乗って登校します。


学校の校門前には、お坊ちゃま達の送迎の車が、ずらっと並んでいます。
チャニョルがフナたんを抱っこして校舎に向かうと、クリスがタオちゃんを抱っこして歩いている姿が見えました。

チャニョルは足早に近づき

「タオ、おはよー!」


「あ、セフナー、おはよ!」

お坊ちゃま同士の挨拶が終わると、クリスに会釈して、2人を追い抜き、ほとんど小走り状態でその場を立ち去ります。

そして、校舎に着くやいなや、すかさず撮影体勢に入ります。
クリスとタオちゃんの登校風景を撮影するのです。
三脚を立ててムービーをセットし、自分は一眼レフカメラを構えて撮影します。

フナたんは、ワクワクした表情で見守っています。
クリスに抱っこされたタオちゃんの幸せそうな顔が、堪らなく可愛くて、見ている自分も幸せになるのです。
そしてチャニョルも、タオちゃんを愛おしそうに見つめるクリスの顔が素敵すぎて、レンズ越しに見惚れてしまいます。

もちろん、クリスもタオちゃんも、撮影されていることは分かっていますが、タオちゃんの友人であるフナたん達が個人で楽しむ範囲だし、悪質ではないと判断して、特に抗議などはしません。
もちろん、迷惑行為があれば、クリスから厳重な抗議をするつもりですが、今のところ、そのようなトラブルはないようです。

タオちゃんが校舎に到着するまでの僅かな距離なので、あっという間に終了し、フナたんはタオちゃんと一緒にお教室に向かいます。
チャニョルもクリスとともに、執事室に向かいます。


「セフナー、もし事故写真とかあったら削除してね」


「えー、どんなタオでも、全部ぼくの宝物だよー」


「やだやだー、可愛いくないのは消して!」


「えー、うん、分かった」

実はタオちゃんも、撮られていることを楽しんでいるみたいです。


今日の体育の授業では、お坊ちゃま達はバスケをしています。
フナたんからの指令で、チャニョルはタオちゃんが走り回る姿や、ゴールを決めるシーンなどを撮影するためにスタンバっています。
特に、ゴールを決めた後、フナたんとタオちゃんがハグするシーン(フナたんの個人的な計画ですが…)を絶対に撮るように念押しされています。

他の執事の中にも、資料用に自分のお坊ちゃまの様子を撮影している人もいますが、チャニョルはフナたんではなく、タオちゃんだけを撮影しています。
ムービーの方は、ダビングすることを条件に、クリスにお願いして撮影してもらっています。
クリスが撮影するタオちゃんは、思い入れが違うからか、タオちゃんの美しさが余すところ無く撮影されていますので、フナたんにも大好評です。

タオちゃんを撮影するクリスは、とっても優しい表情です。運動会で可愛い我が子を撮影する父親だって、こんな愛に溢れた優しい表情しません。
あまりに美しい横顔なので、チャニョルは思わずカメラをクリスに向けて撮影してしまいました。


その時、
ゴールを決めたタオちゃん、そしてフナたんがタオちゃんにハグするモーメントがあったのに、クリスに夢中になっていたチャニョルは撮り逃してしまいました。

しまった!!!

焦るチャニョルに、クリスは苦笑いしつつ、動画は撮れているから、あとでそれをキャプチャすれば?と教えてくれました。
さすがっす!クリスさん!マジ、リスペクトっす!




放課後、フナたんは仕事場に向かいます。
実はフナたんは、お父さんに頼まれて、小さい頃から何度もお父さんの監督する映画に出演しているのです。

今回の映画は青春群像劇で、出演者のひとりとして、またお父さんにオファーされました。
役を作りこまず、自然なままの若者の感性を大事にしたいからと、事前に台本は渡されていません。
分かっているのは大まかなストーリーだけで、セリフも大半が現場でアドリブを要求されるという、ちょっと厄介な作品です。


今日は特別に、タオちゃんが仕事場に見学に来てくれています。
撮影現場は、遊園地で、園内は普通に賑わっているように見えますが、撮影のために貸し切りで、お客さんは全員エキストラです。
お父さんに、折角なので、撮影が始まるまでタオちゃんと遊んでいなさいと言われ、2人とも大喜びです。

チャニョルとクリスは、執事の正装であるスーツ姿は遊園地に相応しくないので、カジュアルな服に着替えさせられました。
そして、園内にいる間は、フナたんとタオちゃんのお世話は禁止で、なるべく近づかないようにと言われました。

執事と離れて2人きりで行動しているので、フナたんはタオちゃんとデートしている気分です。
ちゃっかり、手まで繋いじゃってます。


ジェットコースターに乗ったり、フリーフォール、グルグル回転する乗り物、振り子式の乗り物など、アクティブな感じのアトラクションは全然平気なのに、お化け屋敷に誘った途端、タオちゃんの顔色が変わりました。


「タオー、行こうよー!」


「やだやだ、絶対ムリ…」


「そんなに怖くないって」


「ムリなものはムリ!」


「じゃあ、ジャンケンして、ぼくが勝ったら入って、タオが勝ったら入らない」


ジャーンケーン ポン!


タオちゃんがチョキ、フナたんはグーでした。


「よっし!勝ったぁ!」


「……」


半べそのタオちゃんを引きずって、いざお化け屋敷へ!
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