anniversary plan

□一歩を踏み出す勇気
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フィンー、朝だよー!
起きないと私が作ったマフィン、あげないよー!

聞こえてくる陽気な声は、いつもと何も変わらない。俺は昨日、あいつから逃げ出したってのに。
大体俺は何なんだよ。好きなやつに手握られただけで走り出して逃げるとか、乙女かよ。ありえねえだろ。
マリアもなんでいつも通りなんだ。昨日は朝、声かけなかったくせに。そんなことは滅多にないことで、具合が悪くてもマリアは毎朝俺を起こすんだ。だから、俺が何かしちまったんだろうと普通にしたんだ。そしたらマリアもすぐにいつも通りに…、って、そうか。俺と同じことしてるってことかよ。くそ、なんだよ、それ。そしたらまた、ずっとこのままなのかよ。

そのあとも何回か声をかけてきたマリアを無視し続けて、俺は布団に潜り込んで考え続けた。ぐるぐる同じところを回る思考に、マフィン早く食いてえなと思ったとき。
あいつ、自分が作ったって言ってなかったか?

くそ、なんだよ、すげえ食いてえし。少し甘過ぎたマフィンの味が記憶の中から口に広がって、なぜか分からないが、俺の決意を固めた。

親の用意した朝飯も食わずに家を出て、マリアの家の前で俺は大きく息を吸い込んだ。

早く出てこいよ。
好きだって、言ってやるから。
好きって言うまで、離してやらねえから。
 

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