anniversary plan

□隣同士がいちばん自然
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ピピピ。無機質なくせに無駄に自己主張してくる電子音。朝から自分の仕組んだその音にむっとするなんて、きっと他人からしたらバカらしい。けど、私はこの音じゃないと、なぜか絶対、起きれない。だから仕方ない。どうしても、この時間に起きなきゃいけない、起きたいから。

まだちゃんと開いてない目をこすりながら、鏡の前で簡単に寝癖を直す。ちょっとだけ顔を確認して、そしてカーテンと窓を一気に開けた。

二メートルも離れてない向かいの窓はいつも通り開け放されてて、揺れるカーテンの向こうにいる幼馴染みに、私は少しだけ大きな声を上げて呼び掛けた。

「フィン、もう朝だよー!早く起きないと、ママお手製のマフィン食べちゃうよ!」
「……あ?…それだけは、やめろ……」

きっとまだ寝ぼけてるに違いないフィンは、それでもいつも、ちゃんと返事を返してくれる。滅多にないけど、たまに二度寝しちゃうときもあるけど。
でも、今日は大丈夫。ママのマフィンは、フィンの大好物のひとつだから。




「…え、早くない?」
「うっせ。マフィン寄越せ」

私の第一声も確かにひどいかもしれないけど。フィンもひどいと思う。そこはさすかに、ください、でしょ。

「なんだなんだ、その態度は。いいのかなー、マフィン、欲しくないのかなー」
「朝から面倒くせえ絡みしてくんなよ、ばか」
「もーあげなーい、マフィン没収ー!」
「ごめんなさい、マフィンください」

学校まで向かう短い時間。いつもこうして、くだらないことで笑って。私はフィンと過ごすこの時間が大好きで、家が隣で本当によかった、そう時たま、不意に思う。
朝ごはんをたっぷり食べてきたはずなのに、フィンはマフィンをぱくりと大きな口でひとくち食べた。

「…うまいけど、なんかいつもと違くねえか?」
「気づいたっ?」

何が違うのか考え込むフィンの前に回って、顔を覗きこむように見上げる。思考を止めてきょとんとしたフィンの口の端には、マフィンがちょっとついてる。

「それね、私が作ったんだよ!おいしかったー?」

口の端のマフィンを指先で取ってあげて、フィンの口にやさしく押し込むと、突然フィンは走り出してしまった。学校はもう目の前で、まだ急ぐ時間でもないのに。

………お腹痛くなったのかな。
…えっ、私が作ったマフィンで!?
 

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