anniversary plan
□君が愛しいと気づいたから
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ドアの向こうからわずかに響いてくる弾んだハミングに、読んでいた本を閉じる。弾んだ足音と、弾んだノックの音は、それだけで不思議とあたたかさをもたらすから全く手に負えない。
「クロロ!今日はなんだと思う?」
「おまえからチョコレートの香がするな」
早く来て、そう言ってすぐに背を向けるマリアの楽しそうなハミングを聞きながら広間に向かえば、いつもと同じで何人かもうすでに集まっていた。
部屋からそのまま持ってきた本を開いて読み進めようとすると、本に影がかかる。
「クロロ、はい!」
「ああ」
目も向けずに差し出した手の上に置かれたものの重たさに、自然と目を向けて驚いた。
「…食べていいんだよな?」
「クロロ!」
一瞬で拗ねるマリアの手と、四つのハート型のマフィンを引き寄せる。こういうときは直感的な判断に任せた方がいい。
「俺のだけ、これにしたのか?」
「そう、だけど…もう!クロロなんか…」
他のやつのところに行こうとするマリアを思いきり引き寄せて、腕の中に閉じ込めてしまえば、マリアからは甘ったるいチョコレートの香が漂ってくる。
「甘いものならいくらでも食えるからな。おまえも食べさせろ」
「な、なに言ってるの…!」
耳まで赤く染めるマリアは、こういうときに必ず気持ちとは正反対の言動をとる。
俺たちに呆れて誰もいなくなった広間で、俺とマリアは、甘い幸せの中に深く身を沈めていった。