anniversary plan

□やっと素直になれたからで
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分かってるんだ。俺は口数が多くないし、その割に余計な言葉ばかりが口から出て、そして根本的な部分はなぜか口をついて出ない。恐らくはそれこそが問題で解決したいと思っているにも関わらず、俺は一向に手をつけられない。
そんな俺の手を振り払うのは、当然なんだろう。



「団長…、何があったのって…聞いていいのかな?」
「…俺はおまえに話すべきなのか?」
「えっ、いや、それは俺には分かんないけど…」
「…俺が悪いのか?…そうじゃないよな?問題はもっと…」
「ストップ、ストップ!そうやって考えすぎるのよくない癖だよ。思いきって直感で行動してみたら?案外うまくいくかもよ!」

それが出来ないからこうして考えすぎるはめに陥ってるんだ、そう言おうとした俺の背中を無理矢理押していくシャルは、何も聞かなかったくせにもちろんマリアの部屋の前に俺を連れていく。大体理論的な考えをしすぎるのはシャルもだろうに、こいつは直感的な行動なんてしたことがあるのか。

「マリアー、ちょっと話があるんだけどいい?」
「…おい、勝手なことをするな」
「後でいくらでも聞いてあげるから、とりあえず行きなよ。まずちゃんと謝るんだよ?分かった?」

分かるわけがない。一体俺は何について謝るんだ。理由もなく謝ったところで何の意味もなければ、問題がこじれるだけだろう。
それだけの反論を頭の内で返して、結局のところ俺はドアを開けた。
考えすぎるのはよくない癖らしい。

「…っ、なんでクロロが来るの」

俺を見た第一声がそれか。俺だってこんなことはしたくなかったんだ。おまえに嫌な顔をされるのも、ため息をつかれるのも、呆れるほど気が滅入るんだ。

「…悪かった」

言われた通りの言葉を告げれば、マリアは目を見開いて驚いた。なぜか居心地の悪くなった俺は視線を足元にそらして、あたり前だが言ったことを後悔した。
どうしてとか、なんでとか、理由を聞かれたら、一体何て返すんだ。シャルに言われたから。謝った方がいい気がしたから。
謝ることで、おまえがまた笑ってくれるなら。

「クロロ…、なんで謝ってるのか分かってないでしょ?」

予想外の辛辣な言葉に見つめれば、マリアは柔らかく微笑んで俺の手をその小さな手で包んだ。

「分かってるに決まってるだろう」
「…そうは思えないけどな」

分かってる。本当は分かってるんだ。
小さな手を握り返せば、それはただ待っていたようにさらに俺の手を包む。

「おまえの全てが愛しいからだ」
「……え?」

口を開けたまま立ち尽くしたマリアは、どれぐらいの間かは分からないが、とにかくしばらく呆然としていた。そして常に頭を働かせている俺も、なぜか何も考えられなかった。
ただ見つめ続けたそのあと、マリアは顔を真っ赤に染めてもう一度、クロロなんか、といくらか叫ぶように声を荒げて言ったのに、次の言葉は口の中で呟くように言った。
気づかなかったが、どうやらこいつも俺と同じで、大事なことほど口をついて出ないらしい。
 

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