中編

□独占欲の狂気
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初めはただの興味だった。
自分の領域を侵されそうになったことに臆することなく媚びることもなく、瞳に光を宿して躊躇なく俺を殺そうとしてきた、その幼く見える少女に。弱々しい彼女の手首は軽く威嚇のつもりで込めた力だけで、その手から綺麗な音色を鳴らしてポケットナイフを落とした。半ば諦めたように顔を上げた彼女は、死を意識しているはずなのにその綺麗な瞳をさらに輝かせた。

欲しいと思った。
死を享受しても失わない生の輝きは美しく、薄紅色に染まる頬も薄汚れたこの場所ではあまりにも繊細で純粋な愛らしさの象徴だった。

滅多に手に入れることの出来ないものを見つけたと思った。いつでも手の届く場所で、好きなときに愛でるために連れ去った。飽きたら捨ててしまえばいい、そう思いながら。

○○は初めこそ順応性の欠片も見出だせなかったが、ゆっくりと時間をかけた後には恐らく本人すら驚くほど打ち解けていた。性別に関係なく、○○が打ち解けていけばいくほど、手元から離したくなくなった。部屋から出したくない、俺以外と会話をさせたくない、誰にも見せたくない。俺だけが○○の全てを独占していたい。○○はそれを当然のこととして受け入れていた。俺の意思に反したことは決してせずに、自分が俺の所有物であることを明確に理解していた。

その概念が音をたてて崩れ始めたのは、フィンクスが○○を外に連れ出すようになってからだった。俺にしか見せなかった表情を、フィンクスに向ける○○。俺にしか頼らなかった○○が、フィンクスには些細なことすら頼り始めるようになって、過度なスキンシップをする。俺の物だという認識はあるが、無自覚に俺の手の内から抜け出ようとしている、そう思えてならなかった。

問題は、その事態に俺自身が複雑な感情を抱いて混乱したことだった。自分の支配下から感情が飛び出し、逆に俺を呑み込もうとする。そしてその感情が一体何かが分からない。手に負えない、というのが正に当てはまる状態だった。

解決案を見出だす前に起こったそれに、俺の感情は激しく暴れた。
誰にも触らせはしない。
○○は俺の物だ。

シャルから奪い取った○○を、すぐにでも自分の物にしようとした。服を破り捨てて愛撫もそこそこに、俺を埋め込もうとした。その想像は完全に俺の支配下から抜け出て、感情も欲さえも従えていた。
感情に呑み込まれた俺の手が○○に伸びて、○○とは相対的に汚れて見えた。背反してさえ見えた。
俺によって汚される○○が頭をよぎって吐き気が襲ってくる。
違う、そんなことをしたい訳じゃない。

そばに置いて好きなときに愛でる、それで良かったはずだ。俺さえも呑み込もうとする独占欲が○○を汚そうと蠢く。汚したい、と。

適当な女とした時には、そんなことは欠片も思わなかった。だとしたら、この独占欲と感情は○○に起因している。

不安気に目を覚ました○○に、愛してると囁く。
依存しているのは俺の方だった。
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