中編
□許さない
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薄暗い部屋の中で控えめに輝く涙は、無垢で純粋な美しさを包括していて、そして危うかった。愛しい気持ちが込み上げてきて涙に口付けると、そっと深いところまで悲しみが入り込んできて、それは胸の中に重たい石を放り投げられたような、そんな苦しさと痛みをもたらした。
「クロロ…私はクロロから離れたりなんかしないよ」
涙は流れているのに、感情を映さない瞳に訴える。少しも揺れない瞳は、瞬きすることなく私を見つめる。
「なら、なぜ俺との約束を破る?なぜ俺の言う通りにしない?なぜフィンと…」
「クロロ…」
冷静を装う、きっと自分でも理解出来ていないクロロ。私はまぎれもなく、疑う必要なんてないくらい、本当にクロロのものなのに。
「クロロごめんなさい…もう約束破らないから…私はクロロのものだから…」
「もう、許さない」
鎖骨の辺りに顔を埋めていたクロロがぽつりと、でも低く響く声でつぶやいて、私の体中を波立たせた。恐怖、よりずっと暗く重い息苦しさ。
「許さない、もう二度と離さない」