中編

□追憶の罰
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凍えるような寒さの冬に、私達は出会った。その年はそれほど雪は降らなかったけど、冷たい風が一日中季節が変わるまで強く吹きつけていた。

出会ったのはただの偶然だった。私の住む小さいけれどあそこではかなりマシな方の小屋に、食糧を主につまるところ役に立つものを探しにクロロが来た、という恋を感じさせる予感は何もない出会い方だった。私は寒さをしのぐように部屋の隅で毛布もといボロ布をまとってガタガタ震えていた。でも侵入者があるとなれば話は別で、その日も死力を尽くして追い出そうと構えた。生活をする場所を奪われるのは、この季節では死を意味する。それだけは絶対に避けなければいけないから。

そして侵入者が気配を消すことなく小屋に足を踏み入れたとき、私は先日拾ったばかりのナイフを手に一気に攻め込んだ。力の限り突き刺そうとしたのにいとも簡単に手首をつかまれて、逆にぎりぎりと力を込められてナイフは私の手からこぼれ落ちた。私はそこで死を意識して、せめて私を殺す人の顔ぐらいは見ておこうと半ば諦めて顔を上げた。

驚くべきことに、侵入者も私を見ていた。これだけの力量の差があるのだから難なく一瞬で殺せるはずなのに、優しい笑顔を浮かべて。

ばかみたいだけど、その瞬間に私は恋に落ちた。全く現実というのは無慈悲なものだと思った。まさに今からその人本人に殺されるのに恋に落ちるなんて。

そしてこれもまたおかしな話だけど、クロロも私と同じだった。目の前にいる欠片も力のない少女を殺してしまえば、小屋に備蓄されている食糧や衣服などを持ち去るのはひどく簡単なことなのに。

私は小屋の中のものと一緒にクロロに奪われた。選択する意思も権利も、奪われた。クロロにしてみれば、私を奪うのも殺すのもどちらも容易いことだったんだろう。おそらく理由はそれだけだった。
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