彼のセリフシリーズ

□そういうあれはまだ早いと思うのだが
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慣れてきたはずだった。当たり前みたいに、そうするのが普通みたいに、してきたんだけど。ひとつのベッドで一緒に寝るなんて、そんなことなんでできてたの……。

ベッドを挟んでクラピカを見つめてみたけど、私の存在そのものがなくなったみたいに無反応だった。ゴンと普通におしゃべりして、寝仕度をして、私だけが気にしてるみたいで、正直ばかみたいだった。そう考えると、私はきにするけど、クラピカが気にしないなら!別段問題のあることにも思えないような気がした。そうして私はもんもんとしながらも部分的にはスッキリした気持ちでベッドに潜り込んだ。気にしなければいいだけだから、大丈夫、そう言い聞かせて。

そしてそれは甚だ間違った考えだったことをすぐに思い知った。私が横になって少しも経たないうちにクラピカもベッドに入って、少しは離れてるけど、クラピカの体温とか香とか、そういうものがそのまま伝わってきて、私の胸はばくばくとうるさく鳴っていた。クラピカにも聞こえてしまってるんじゃないかと、思うほどだった。
眠りたいのに寝れないし、クラピカは必要以上に冷たいし、何だか泣きそうになっていると、クラピカの指先がそっと私の指に絡められた。思わずびくりと体が跳ねたけど、そんなことは気にならないのか力が込められた。
こんなの、私のせいじゃなくて、クラピカのせいだよ。

背中を向けたままだったから向き直って、手をひっぺがしてクラピカの背中にぺたりとくっついた。私の心臓の音は伝わっちゃったけど、それでもいいと思った。好きだから。こんなに、好きだから。後ろから腕を回して抱きついて、首や背中に、静かにでも何度も、キスを繰り返し落とした。好きだから、当然のことだと、そのときは本当にそう思ってた。

「………○○、」
「………………ん?」
「……いや、……その、そういうあれは、……まだ、早いと思うんだが…」
「?…………っ、ち、ちがっ」

静かに、そうささやくように言われて口を塞がれて、熱い唇に体も心も溶けてしまったような気がした。

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