彼のセリフシリーズ

□おやすみ、また明日
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キルアのばか。ばか。ばかばか。

いくらなんでも放っときすぎじゃない!なんなの、私って一体キルアのなんなの。
さびしいを通り越して、あきれを通り越して、怒りに変わったころ。私ははたしてこの状況で付き合ってると言えるのかと憤っていた。

キルアなんかもう嫌い!とか言えたらいいのに。好きすぎて仕方ないから情けない。好きになった方の負けって、ほんとその通りだなぁ、なんてしみじみ思っていたら携帯が鳴った。
そう言えばそろそろ本屋から電話がかかってくるころだった。取り寄せてもらった本が届いたのかもしれない。

「はい、もしもし」
「…おれだけど」

おれだけど。…キルアだ!?

「キルアのばかあ!」
「は?」

さびしくて死にそうだった、と文句をつらつら言ってやると、キルアは爽やかに悪かった、と言ってきて。そんな一言で許してやらないんだから!って言いたいのに、もう許しちゃってる自分がほんと情けない。

「ゲームクリアしたんだよ、ゴンが」
「そうなの?すごいね、お疲れさま!」

いまいちどんなゲームか知らないけど。こんだけ時間かかってるんだから大層なゲームに違いない。

「明日そっちに帰るから」
「……え!」

さっきまでの怒りはどこへやら。キルアは港町に住んでる私のところまで来てくれると言う。キルアがこんなにやさしいなんて、しかも会えるなんて。

「すごい楽しみ!お菓子作って待ってるね!」
「いや、早く寝ろよ。おまえちゃんと寝ないと朝起きれねーだろ」

確かにもう十時を回っていたけど。というかそんな朝から会いに来てくれるんだ…!
きっと私が犬だったら尻尾がちぎれるぐらい喜んでる、そう言ったら、おまえってほんとばかだよな、そう言われた。

「じゃあ、待ってるね。おやすみ」
「おやすみ、また明日」

おやすみ、また明日。
その夜はぬいぐるみじゃなくてその言葉を抱きしめて、私をゆっくり眠った。しあわせすぎる眠りのおかげで私は寝坊をして、キルアにあきれられて。でもゆっくり過ごせるんだろうと思っていた私は、すぐにキルアに期待を裏切られた。なんでもゴンのお父さんに会いに行くからのんびりできないとか言い出して、昼になる前にゴンと二人でどこかへ消えてしまった。

いつもどっかに行っちゃうのはキルアの方で、私は待ってばかりで。
今度こそ許してあげないと、その夜さびしくてかなしくて怒っていたところにキルアから電話がかかってきて、結局私はキルアを許してしまった。
 

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