彼のセリフシリーズ

□本当は、今すぐ会いたい
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ふわふわの柔らかいチーズスフレを冷蔵庫に入れて、私はるんるんと上機嫌だった。

今日は朝からツイていた。注文していた取り寄せの本が午前中に届けられて、その本を読むのにカフェに入ったら、私の大好きな期間限定のフレーバーティーがちょうどメニューに加えられていて。甘い紅茶の香りに包まれながら、私は本をゆっくりと読んだ。
帰り道、買い物をしながら歩いていた私に、二回も猫がすりよってきてくれた。二匹とも甘えん坊で、連れて帰りたいくらい愛らしくて、私は一週間分くらい癒されて家に着いた。
そうして作り始めたチーズスフレは、自分で見ても美味しそうに出来上がって。私の気分はかなり良かった。

これだけツイてるんだから、キルアに電話かけたら出てくれるかも。そんな考えがふと浮かんだとき、携帯が鳴った。もしや…!と携帯を取ると、本当にキルアだった。

「キルアー!大好きー!」
「は?」

私の高すぎるテンションにちょっと引きながら、キルアは私の話を聞いてくれた。本が届いて、お気に入りの紅茶を飲んで、ケーキがうまくできて、気のない相づちすら、楽しい気分にさせてくれた。

「キルアにも食べさせてあげたいなあ、チーズスフレ。おいしくできたと思うから!」
「本当にうまくできたのかよ。ちゃんと味見してから、おれに渡せよな」
「ふふ、大好き。キルアのそういうとこ大好き、すごい好き」
「…そうかよ」

それから少しお互いの近況を話して、何度か大好き、と言って。私がどんどん元気になるのと正反対に、キルアはだんだん声が暗くなっていって。何かあったの、と聞こうかと思ったときだった。

「キルア…?なんか元気ない?」
「…おまえさ、おれに………」
「…どうしたの?」
「なんでもねー、気にすんな」

え、気になります。
どうしたの、気になるよ、ねえねえキルア、言って、お願い、早く。
しつこいくらい催促をして、キルアはあきれ始めてしまう。けど、今日の私は絶好調なんです。

「キルア、大好き。教えて?ねえ、大好きなんだよ?」
「おまえ恥ずかしくねーのかよ…」
「えっ、だって好きだもん」
「…おまえはおれに会えなくても、平気そうだな」

暗いトーンで言われた言葉に、私の気分も一気に暗くなった。キルアはなんにも分かってない。

「悪い、冗談だから」
「…冗談でも、そんなこと言わないでよ」
「分かった、もう言わねーから。いっこだけ、聞いて」
「…なに?」
「本当は、今すぐ会いたい」

キルアの声は、すごく小さかったけど、私には小さすぎるくらいで十分だった。それぐらい、嬉しすぎてしあわせで、私は、今日はきっと神様がくれたご褒美の一日だったんだと、思った。
 

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