彼のセリフシリーズ

□意外に慣れてなくて、悪かったな?
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光を反射する水面とやわらかい風、それにぽかぽかの太陽。こんなにボート日和の日はないと思う。

「レオリオ見てみて、口ぱくぱくしてる!ごはん欲しいんだ!」
「ははっ、やってみろよ。うじゃうじゃ寄ってくるぜ、きっと」

ぽい、と買ったばかりの餌を投げ込むと、レオリオの言った通りどこにこんなにいたのかと思うほどの魚が寄ってくる。その光景はさすがにかわいいとは思えない。

「ふぇ…ちょ、ちょっと怖い…」
「だろうな。よし、ちょっと飛ばすか」

オールで水をかくレオリオは、ちょっと目を向けると見とれてしまうほどかっこいい。気持ちに逆らわないで見つめていると、優しい笑顔が返ってくる。薄手のサマーセーターからのぞく綺麗に引き締まった腕や胸板が、オールをこぐことで余計際立っていて息苦しい。

「だいぶ離れたな、もう怖くないか?」
「うん、大丈夫。…レオリオ、あのね…」

くっつきたい。なんて、言ったらだめかな…。ボートの上だし…女の子からそういうこと言うのは変なのかな…。

「なんだ?悩むぐらいなら何でも言えよ、俺はそんなに気が利く方じゃねえから」
「じゃ、じゃあ…その…レオリオに…くっつきたい!…いい?」

思わず身を乗り出して言った私と、オールを止めたレオリオ。短い沈黙はお互い赤面してしまうほど静かで。

「ごめ…やっぱり女の子から言うのは変だよね!?何でもないから、忘れて!」

言わなきゃよかった。こんなことで嫌われたら悲しすぎる。ボート日和の楽しい気分が急激に薄れていく。
レオリオはおしとやかな女の子が好きなのかもしれない。自分からくっつきたいなんて言う女の子は、はしたなくて嫌いだったら。泣きたい気持ちがふくれて押しつぶされそう。

「○○、こっち来い」

涙をこらえて顔を上げると、腕を広げて待ってくれているレオリオ。少し固いけど、間違いなく笑顔で。
揺れるボートの上をゆっくりレオリオの方へ行って胸に体を預ければ、そこはやっぱり女の子とは全然違った。やわらかくはないけど、その代わりすごく安心する。包んでくれるような。
優しく回された腕が力いっぱい抱きしめてきて、嬉しいけど少し強すぎるほどで。

「ん…ちょっと…くるし…」
「えっ!?わ、わりぃ!」

ぱっと離されてしまった腕は広げられたままで、行き場をなくして固まってしまっていて。レオリオは意外に私よりもずっとピュアなのかもしれない。

「ふふ…なんか意外。いつも余裕に見えたのに」
「…意外に慣れてなくて、悪かったな?」

不貞腐れて腕を組んでしまうレオリオはかわいいけど、それでもやっぱりかっこいい。組まれた腕を気にせずに寄り添っていると、しばらくして今度は優しく抱きしめてくれた。それは紛れもなくボート日和のやわらかくて愛らしい空気だった。

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