彼のセリフシリーズ

□だから、初恋なんだよこれでも
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気持ちのいい午前中の空気は、私の大好きなもののひとつ。その中でカフェをするのはもっともっと大好き。
テラスから見える長身のその人も、朝の空気が似合う。コーヒーを片手に本を読んでいるのも、とてもよく似合う。

「レオリオー!おまたせ!」

お店の外から声をかけると、なぜか少し慌てた雰囲気。きょろきょろして私を見つけると、やっといつも通りのあの穏やかな空気をまとって手を振ってくれる。

「遅れちゃってごめんね、私から誘ったのに」
「いや、構わねえよ。○○は紅茶か?」
「うん!今日はレモンティーがいいな」

私が向かいの椅子にかけると、レオリオは店員を呼び止めてレモンティーを頼んでくれる。先週とほとんど同じ。ひとつ違うのは、先週はハーブティーだったこと。それ以外は同じ。私より早く来て、私を待ってくれてるレオリオとコーヒー。そよ風が通るテラス。

「どこ行こうかー、先週行ったポピー畑すごい綺麗だったね!」
「そうだな、○○によく似合ってた」
「私に…ポピーが?」
「ああ、小さいのに目を引き付ける鮮やかさだった」

急にそんなことを言うレオリオは穏やかで、対照的にあたふたしてしまう私はこういうことに慣れてない。男の人と接するのだって、まだまだ慣れてない。

「暖かくなったし、ボートでも漕ぎに行くか?」
「わあ、行きたい!」

レオリオは大学で知り合った。中高とずっと女子校だった私は男の人に馴染めなくて、たまたま知り合ったレオリオが優しく手を差しのべてくれた。男の人と普通に話せるようになったのはレオリオのおかげで、そんな私がレオリオに恋に落ちるのは至極あたり前のことで。

「鳥とか魚とかいるかなー?」
「まあ、いるだろうな。餌売ってると思うぜ」

私と違ってレオリオは何にでも慣れてる。こうして休日にデートをするのも、キャンパスで女の子と会話するのも。

「早く行きたくなって来ちゃった!」
「おいおい、まだ紅茶も飲んでねえだろ」

でも、俺もそう思ってた。
ふわりと包むように私の頭に置かれた手は、私よりもずっとずっと大きい男の人の手。嬉しいのに苦しいくらい息が詰まる、この感覚にも私はまだ慣れない。

「レオリオ…」
「なんだ?」
「好きだよ…大好き…」

大きな手を取って頬をすりよせると、レオリオの体温が直に伝わってくる。情熱と安心が混ざるこの感覚は、心地いい。
もっとレオリオを感じたくて唇を寄せたとき、急に手を引かれてしまう。驚きと悲しさから見つめれば、見たことのない真っ赤な顔のレオリオ。

「ばっ…おまえ…」
「や、やだった…?ごめんなさい…でも…好きだから、したくなって…」
「ち、違えよ!嫌なわけねえだろ!」

あたふたしているレオリオは、なんだかいつもと全然違う。手で口を覆うその仕草は、緊張しているようにも見える。

「…慣れてねえんだよ、俺は」
「え?何に慣れてないの?」
「だから、初恋なんだよこれでも!」

少し早口に言い切られた言葉。ぽかんとしてしまう私の耳には、でもしっかり聞こえていて。
初恋、だなんて。

「えっ…私の話、かな?」
「…おまえのその天然なとこはすげえかわいいと思ってるけどな、さすがに分かってくれよ。俺の話なんだ、俺の初恋の相手がおまえなんだよ」
「レオリオの…初恋…が、私…?」

驚いて声を上げた私に、レオリオは頭を抱えていた。やっぱ言わなきゃよかった、そう確かにつぶやいた、憂いを帯びたレオリオもかっこよく見えたのは、今は内緒。

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