彼のセリフシリーズ

□しおらしいのとか似合ってねえんだよ
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今度こそ静かになると思っていた○○だったが、またもや俺の予想に反して○○はクロロにべったりだった。仕事以外の時間、ずっとだ。打ち上げの最中も○○はクロロのそばを離れずにいて、酔った勢いで抱きついたりするから、見ているこちらがハラハラする。
早目に自室に引き上げようとするクロロを○○が追いかけて、これは本格的にまずいなと思ったのも束の間、○○はクロロの部屋に消えていった。おいおい、クロロもなに考えてんだよ。悶々とした気持ちでやけ酒を煽っていると、三十分もしないうちに○○だけ戻ってきた。一目見ただけで落ち込んでいるのが分かるほどしょぼくれて。

「○○!どこ行ってたんだよ、飲もうぜ!ほら、お前の分だ!」

ウボーが投げた缶ビールはそのまますこんと○○の頭に命中した。一瞬よろけた○○は頭をさすりながらふらふらと外へ出ていく。
万が一にもないとは思うが、なにせ○○のことだからさっぱり分からない。とにかく俺は○○のあとを追って外に出た。

○○は少し離れた場所に小さく膝を抱えてしゃがんでいた。月明かりをうけた姿が消えちまいそうで、思わず駆け寄って隣に行く。

「おい、何があった?」

ちらりと一瞥しただけで膝に頭を埋めてしまう○○は何も言わない。あの下手くそな笑顔もなしだ。

「…おい、クロロに何かされたんじゃねえよな?」
「…されてない」

小さな声だったが、とにかく安心した。絶対ないとは思っていても、あれだけの女好きだと不安にもなる。とくにこいつは体だけは女らしく成長してるんだ。全く手に負えない。

「抱かれたいかって、聞かれたの」
「…あ?」

小刻みに震える肩に、怒りが沸々と沸き上がってくる。ふざけんな、クロロだろうとこいつにそんなことを言うなんて絶対許さねえ。

「好きって言ったの…、でもクロロは…俺はおまえを女として好きにはなれないって…」
「…それで?」
「あきらめたくないって抱きついたら…、じゃあ俺に抱かれたいかって…」

もういいや。顔を上げた○○の頬はきらきらと輝いていた。星なんかよりずっときらめく涙なんて、見たくもない。あの下手くそな笑顔も見たくない。

無理矢理抱きしめた体は、やっぱり昔とは違って女のものだった。でも、触れるあたたかさは何も変わらない。小さい頃と、何も変わらない。

「しおらしいのとか似合ってねえんだよ」

くそ、こんな言葉しか出てこない自分が情けねえ。でも、笑っててほしいと思うのは誰にも負けねえ。俺よりこいつの幸せをねがうやつなんか、絶対いねえんだ。

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