彼のセリフシリーズ

□好きすぎて、ごめん
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ぱちっと目を開けると見たことのない天井と薄暗い照明。やたら軽く感じる体を起こすと、ノリのよく効いたパリッとしたシーツに挟まれていた。

「えーっと…?」
「○○、起きた!?」

暗い部屋の中動く影はまっすぐ私に向かってきて、だいぶ近づいてからベッドライトの灯りでゴンの顔が見えた。

「大丈夫?どっか痛いとこない?」
「へーき!むしろすっごく調子いい!」

不思議なぐらい体は軽く頭はすっきりしていた。よかった、と心底安心したように微笑むゴンに私は悶えそうになる。

「い、いまなんじ?そう言えばここどこ?」
「今は…夜の9時だよ」
「9時かー………ええ!?」

一体全体どーいうことだ。だってさっきお昼ごはん食べて…。え、つまり私は昼過ぎから今までずーっと寝てたってこと?そりゃ調子いいしさっぱりするわけだよ!

「ゴン、ごめん!!勝手に倒れて眠りっぱなしで本当にごめん!!」

ベッドの上に正座をして私は謝った。ノリが効きすぎて肌触りの悪いシーツにおでこをくっつけて。

「○○は何も悪くないよ、顔上げて」
「ゴン…やさしい…」

ゴンがベッドに腰を降ろして、スプリングがきしんでギシッと音がなる。なんだか随分安っぽいベッドにシーツ。シーツさっきから肌触り悪いと思ってたしベッドはうるさいくらいきしむし…
おやあ?

「………ゴン、ここどこだっけ?」
「ホテルだよ。一番近くのとこに入ったんだ」

ほてる。
ちょっと一回今日一日をおさらいしてみよう。

待ち合わせ→映画鑑賞→手をつなぐ→腰抜かす→食事→キス→気絶→ほてる

………こうして並べてみるとなんかデートっぽいかも。約二ヶ所意味不明なのがあるのはご愛敬ということで。

いや、そうじゃないし!!

「○○」
「はいぃ!?」

はっ、やばい!つい過剰反応しちゃった。今日は散々ゴンに嫌な思いさせてるんだからしっかりしなきゃ!

「今日ごめんね…俺のこと嫌になった…?」
「えっ、なんで嫌になるの?」

いつもと正反対の悲しい顔は今日二回目で。私の方がゴンに嫌なことをしてるのに。

「子どもすぎるよね、俺。すぐに拗ねて細かいことに嫉妬して怒って…嫌われてもおかしくないなって思ってた」
「えっえっ?ちょ、ちょっと待って」

そんな気持ちにさせたのは私なんだから、ゴンがそんなふうに思う必要なんてこれっぽっちもない。というか一番の問題は私がへたれ過ぎることだ。

「好きすぎて、ごめん」

今にも泣いちゃいそうなゴン。薄暗い部屋のせいか、影を落とした顔は思い詰めたようにも見える。

「俺の子供っぽい考え方は、きっとまた○○を傷つけちゃうと思うんだ。だから…」

途切られた言葉の続きにぞっとした。一瞬にして血の気が引いてカタカタ震える。

「やだ…絶対やだっ…」
「○○…でも…」

何も言わせたくなくて、私はゴンの口をふさいだ。重ねた唇から私の気持ちが伝わるように想いを込めて。目を閉じていると泣いてしまいそうで、震える唇をゆっくり離したとき。
視界がくるんと回転してギシッという音とともに背中からベッドに沈められた。何が起こったのか考える前に、熱いやわらかい感触が唇におとずれて。視界いっぱいに広がるのはまぶたを降ろしたゴン。無意識に息を止めてしまっていて唇を離されてほっとしたのも束の間、すぐにもう一度熱い感触。また離れてもすぐに。もう一度、もう一度。
苦しくなって無理矢理息継ぎをしたらすぐにふさがれて、ぬるりとしたもっと熱いものが口の中に入ってくる。あまりのことに私の体は跳ねて驚いて、ねっとりと口内を這われる感覚は初めてのもので。今度こそ本当に息が出来なくて酸欠で頭までくらくらしてくる。

「…ん…ふぁっ…」

蹂躙するようにうごめく舌に次第に声が漏れてしまう。それは自分の口から出ている声なのに聞いたことのない、まるで別の声だった。
ゴンの舌が自分の舌に絡められたとき、未知の感覚が頭まで響いて、私はびくびく体を跳ねさせた。どんどん激しくなる動きに私は抵抗するのをあきらめて、痺れるのにくらくらする、そんな不思議な感覚に身をゆだねた。

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