彼のセリフシリーズ
□あの頃は俺もガキだったんだよ
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出会うきっかけになった、彼が最初奪いに来た本の内容は詳細に覚えてる。それは有りがちなベタベタのラブストーリーで、後で知ったけれどあの本は絶版になっていて、そうでなければクロロが興味を持つような内容じゃなかった。
「あの本、覚えてる?」
クロロが私から盗もうとした本、とぽつりと言うと、クロロは小さく笑った。
「当たり前だろ。あの本のせいで、十年も待たなきゃいけなくなるところだったんだからな」
クロロが居なくなってしまってから、私は何度も何度も繰り返しあの本を読み返した。
偶然出会った二人が、十年後同じ場所でまた巡り会う。お互い心に残していた相手に、再び出会った二人は揺らぐことなく強く想い合う。
設定も話の進み方も、よくあるラブストーリー。
「あの頃は俺もガキだったんだよ」
自嘲気味に笑うクロロは、秋の空気がよく似合う。色づいていく紅葉と徐々に冷えて心に染み込む空気が持つ、独特の物悲しさ。
今、この場所だけは、春の空気だけれど。