彼のセリフシリーズ

□奪われたいって顔してるよ
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シャルはなぜか寝室の窓から入ってきて、ソファに横になっていた私は急に現れたシャルに飛び起きて驚いた。

「びっくり、した…」
「ははっ、ごめんごめん」

お茶を出そうとしたらシャルがシャンパン持ってきたよとテーブルにおいてくれて、私はグラスだけ取りに行った。ポンッと小気味いい音を鳴らしてシャルはコルクをあけてくれた。グラスに注いで、お互い手にしたとき。

「俺たちの記念日に」
「…記念日?」

今日は何かあったっけと考え込んでいると、シャルは私の顔を覗きこんで言った。

「俺が好きだって気づいたんでしょ?」
「ちがっ…そんなことない…!」

私は彼が好きで。彼の穏やかなやさしい空気に包まれていたくて。
テーブルの上の花に目をやる。最初の輝きは、とうに消えていた。

「奪われたいって顔してるよ」

小さな泡をたてているシャンパンを、シャルは少しだけ口に含む。
唐突に合わせられた唇から、シャンパンが流し込まれる。それはとても甘いシャンパン。

すぐに唇を離されて、見つめたシャルは穏やかに微笑んでいて、私の心臓はバクバクとうるさい。

ああ、そっか。
私の胸を打つのは、シャルの笑顔だけなんだ。

甘い甘いシャンパンを自分の口に含んで、シャルに飲ませる。シャルの手からグラスが落ちて、カーペットにシャンパンがこぼれる。むせかえるほどの甘い香の中、私の思考はそのあまりの甘さに溶けていった。
 

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