彼のセリフシリーズ
□気持ち揺れてるって、認めたら?
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次の日に会った彼は、シャルは私のことを大事に思ってるんだろうねといつも通り穏やかに言った。私は何て言えばいいか分からなくて、困ってワインを口に含んだ。
明日は休みだから今日は一緒にいようかとそっと私の手に触れた彼に、私は困惑して、そんな自分にさらに混乱した。ずっと体を重ねたいと思っていたのに、心が拒絶していた。
うつむく私を見て、急だったねごめんと彼は言って、当たり障りのない話をしてくれた。
混乱したまま私は自宅に着いて十一時半を示す時計を見て、今日はまだシャルから電話が来ていないと無意識に思う。
ばかみたい、昨日自分で突き放すようにして電話を切ったのに。
何もかも投げやりな気持ちになって、服も着替えないままベッドに横になる。彼を思うと胸が痛い。シャルを思っても胸が痛かった。
携帯を取り出して、シャルの番号を画面に映し出す。
毎日かかってきてたから、心配なだけ。何かあったのか、気になるだけだから。
「もしもし、どうしたの?」
シャルはワンコール目で出て、自分からかけたのにこんなに早く出ると思ってなかった私は、ひとりベッドの上で座り直した。
「あ…、今日電話なかったからちょっと心配になっただけで、大丈夫ならいいの」
早口に言い切って、ひどく恥ずかしくなった。シャルには言い訳なんて通じるわけない。
「俺から電話なくて寂しかった?」
「そうじゃなくて…!」
否定しようとして、でもシャルにはバレてしまうと思うと何も言えなくなる。電話越しにくすりと笑う声。
「気持ち揺れてるって、認めたら?」
自信たっぷりな声に、もう何度目か分からない鼓動の高鳴りを感じた。苦しかった。シャルに会いたくて、苦しかった。
「シャル…」
「なに?」
「…会いたい」
自分にすら聞こえないくらい消え入りそうな声で言ったのに、シャルはすぐ行くと返事をしてくれた。
もう、後戻りは出来ない。