彼のセリフシリーズ
□彼からの愛の言葉シリーズ
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今日で何日目だろう。
イルミと買いに行った花は、甲斐甲斐しくお世話をしてきたけれど、もうだいぶ萎れていて飾られている本人が煩わしそうなくらいだった。
会いに来てくれた日には、必ず花を買いに行く。買ってきてもらうのではなくて、一緒に買いに行く。私のこれからを決める、大事な標だから。
花が枯れるまでは、私はイルミを待ち続ける。もし枯れてしまったら、胸のうちに熱くくすぶる情熱も焦がれる程の愛情も、花と一緒に捨ててしまう。そうすればもう、あとには何も残らない。
花に目をやる。あと、2・3日というところだろうか。この花は10本目で、諦めるにはもしかしたらちょうどいいのかもしれない。
窓から風が一気に吹き込んでくる。ここの家は風通しが悪いから、こんなことはめったにない。天候が悪い日か、この窓の向かいにある玄関が開くかのどちらかだけ。今日は稀にみる晴天で、風はほとんどない。
「久しぶり」
顔は窓の外に向けたまま、届けられた声を頭に染み渡らせる。うしろで微かに動く気配。
「何見てるの?」
そっと腰に置かれる手と、流れる長い髪が腕に当たる。目を閉じて、ひとつも忘れないよう感触を覚える。
「何も」
「そう?…ねえ、こっち向いて」
ゆっくり振り返る。顔を合わせたときに、泣いてしまわないように。
ふわっと鼻腔に香る花の匂い。驚いて目を開ける。
「これからは俺が買ってくる」
手の中の花を受け取ろうとして、止める。それが何を意味するのか、頭をめぐらせる。
「萎れる前に、俺が綺麗な花に変えてあげる」
窓からやさしく風が吹いて、私たちを包み込む。イルミは玄関の戸を閉め忘れたんだろう、そう思いながら、赤いアネモネをそっと受け取った。
君を、愛す