謀と惹かれ逢えば偶然の下に

□Coincidence.10
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――――どうしてこうなった。



ダンベルをすごい勢いで上下させて時たまぬいぐるみに話しかけて、私はマチの気持ちがちょっと分かるようになっていた。ぐああ!!ってなってるときに発散させようと筋トレするけど、やっぱり心の癒しも必要だよね、ってそういうことだよね?たぶん。

「なんていうか…前から思ってたけど、あんたちょっと変わってるよね」
「えっ、どのへんが?」
「いや、筋トレするならぬいぐるみ置きなよ。効率悪いでしょ」

えっ、マチだってしてたじゃん!って言いたかったけど憐れみの視線が痛かったからやめた。マチの部屋だしマチのものだし。

「どうしたの?あんた、筋トレとか好きじゃないでしょ」
「うっ…これには深い事情が…」
「だから、それを聞いてるんだよ」
「ええー…絶対引かない?ちなみに私は、私にドン引きしてるけどね!」
「…ああ、そう」

それで?、目を輝かせて聞いてくるマチは本当にかわいい。上目遣いされると女同士なのにちゅーしたくなるぐらいかわいい。というわけで、私はマチに綺麗さっぱり話した。
嫌なヤツもといクロロが無駄にイケメンすぎて、すごい理不尽だし腹立つのに、ちょっと胸キュンしちゃう自分が悲しい悔しいうざい!!、と早口で。
ダンベルをようやく置いてマチに目を向けると、きょとんと私を見つめていた。これはキスしてって訴えてるのか…?

「ちゅーしていい?」
「…ダメ。それより、リーア、団長のこと好きなの?」
「ちっ、ダメか…。ええ!?なんでそうなんの!?」
「え、だって…なんとなくかな…」
「好きなわけないじゃん!どんなドMなの、そんな変態気質ないよ!」

おぞましいことを言われた私は、いくらマチと言えどそんなこと言うのは勘弁してほしいと訴えた。腕の中のぬいぐるみも、どんまい、と言うように私を見上げていた。

「まったくマチはー…」
「…好きになっちゃ、ダメだから」
「え?ならないってば。……えっ、マチって…ええ!好きなの!?」
「ちがっ……くは、ないけど…」

えっ、なにそのツンデレテンプレート的なセリフ。かわいい。
頬を赤らめて伏し目がちなマチに恋しない男なんてこの世に存在しない気がする…あっ、これはあれですね!

「マチ、任せて!すごい応援するし、協力する!」
「…ありがと、…でもあんまり余計なことは…」

ダンベルもぬいぐるみも置いて、私は初めて嫌なヤツもといクロロに、自分から会いに行くことにした。しかもちょっとわくわくしながら。
それにしても、あんなかわいい子に想われてるのにそれに気づかないでいるなんて、男としてダメでしょ!ここは私がしっかりと教えてあげよう、うん。
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