謀と惹かれ逢えば偶然の下に

□Coincidence.8
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―――どうしてこうなった。


って、そんな悠長なこと思ってる場合じゃない!!
寝起きから激しく自分自身にツッコむというありがたくない起こし方を迎えたのは、ヤツのせいだった。
目の前にある端整な顔は、申し訳ないが、はっきり言って心臓に悪い。いや、これですんごい不細工がいても目覚め最悪だとは思うけどさ。そういうことじゃないのよ!

なんで、こいつと一緒に仲良くベッドで寝てるの?しかも無駄に距離が近いし!一体何があったの。
思い出そうと頭を回転させて、異様に重たい体とやけに鈍い思考に、能力を使って倒れたことを思い出した。でもそれ以降の記憶がまるでない。きっと疲れた馬車馬のごとく死んだように眠りについたに違いない。なんてかわいそうなんだ、私。

そして、そう。何がおかしいって、これよ。うでまくら。なぜ。わけふめい。思考能力を遮断したい。恐ろしくて。

とにかく、こいつが起きて余計謎で意味不明で不可解な状況に陥って、理不尽に貶められないように、早く逃げるんだ、私!絶対、私のせいにされる!

なんとか重たい体を起こそうとして、私は異様な状況に気づいた。まずこの状況も異様だけど。

なんで、私、こいつの胸にしがみついてんの。えっ、私なんなの。

きつく握りしめたシャツはかたく皺になっていて、推測するに、どう考えても長時間つかんでいたとしか思えない。一体なんで、そう考えたいけど。そんなことをしてる暇はない!今すぐ逃げるんだ!

大体、昨日だってさ!
思い出すのは、広間でフィンクスに追いかけられていたときのことで、急に捕まえられて至近距離で見つめられた、あのとき。無駄にイケメンなヤツに、不本意だし嫌だし情けないけど、一瞬どきりとしてしまった。私を抱き寄せた腕は、思いの外優しかったし。指先で触れて上を向かせるなんて、そんなトキメキテクニック使わないでほしい。どうせそうやって色んな女を騙してきたんだ。これだからイケメンは嫌なんだ!こいつは特にうさんくさいし!

早く早くとギシギシ傷む体を起こして、ガンガンする頭を無理矢理押さえて。起き上がった私の手は、核心的にに捕らえられた。嫌な予感、なんてかわいいものじゃない。恐怖の底の底に落とされるような予感。なんとか、音が鳴るんじゃないかと思うぐらい固まってしまった頭と首を、ヤツに向けた。

「それで、言い訳をする準備は出来ているのか?」

前後の脈絡もなく、それで、とか言うのはやめてください。そう言ったら、口の減らない救いようのないバカだなと言われた。
えっ、私おかしくないよね?
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