謀と惹かれ逢えば偶然の下に

□Coincidence.2
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半日で調べあげたシャルは、有り難いことに優秀だ。比較的温厚なのも助かるところだが、全くあいつは金にがめつい。

資料に書かれた住所にはこじんまりとしたマンションが建ち、ここの三階にその女は住んでいる、と書かれている。シャルの情報によれば、そいつは情報屋をやっているらしいが依頼はまるでないらしい。 大方、俺が盗む予定の能力を活用しようとしたんだろうが、情報屋というのはそういうものじゃない。

目的の部屋の前に辿り着き、表札に印字された文字を見て確信した。こいつは正真正銘、バカに違いない。見たこともないフォントだが、丸みを帯びて一字ずつ大きさが違う字崩れを起こしたこの文字を、ここの住人は気に入っているらしい。

これなら簡単に盗めそうだ。
上がった口角を穏やかなものに戻して、キッチンだろうがトイレだろうが風呂だろうが、どこにいても聞こえるようにノックをした。盗みに来てやったぞという気持ちをわずかに込めて。
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