謀と惹かれ逢えば偶然の下に

□Coincidence.1
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面白い情報を手に入れた。まず間違いなく念能力だろうその能力は、俺にとってはかなり有意義なものだった。しかし有れば使えるという程度のもので、何がなんでも手に入れたい類いのものではない。さて、どうするか。暇潰しにはちょうどいいかもしれないと、シャルに詳しく調べさせようと携帯を手にしたその時だった。

「やったああーー!!きゃあーー!」

金切り声に近い、しかしどうやら喜んでいるらしい叫び声が、辺りに響き渡っていた。声の主に目を向ければ、銀行から警備員に羽交い締めにされて追い出されているにも関わらず、まだ叫んでいた。むしろ警備員に抱きつきそうな勢いのその女に軽蔑の眼差しを送ってから、静かな場所に移動して電話をかけた。

「はーい。どうしたの、団長?」
「調べてほしいことがある」
「そんなことだろーと思った。で、何を調べるの?」
「活字であれば媒体に関わらず一字一句違えず記憶できる能力を持つ女について、だ」

へえー、おもしろいね。適当に聞こえる相づちの向こうで、キーボードが叩かれる軽やかな音が響いている。仕事の早いこいつらしいとそう和やかに思ったところに、で、いくら払ってくれるの?と笑顔が目に浮かぶほど楽しそうな声が携帯から届いた。
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