tesoro mio

□tesoro mio11
2ページ/3ページ

「…ほんとに現実に帰ってきたのかな?」
「確かに実感ねーな」

ブック、とキルアが唱えてやっぱりバインダーは出てこなかった。てことは本当に現実なんだ。なんだか変な感じ。

「お風呂入りたいかも…」
「先に申込み済ませてからな」


ネットカフェで申込みをしたけど、受付の人にすごい目で見られた。確かに泥んこすぎるよね。キルアはまだ子どもだからいいけど私なんかもう大人に近いし。

着替えを適当に買って、近くを散策して見つけた天然温泉に入った。すごいツイてる!と思ってゆっくり入ろうと意気込んでいたら、早く出ろよとキルアに言われた。早くゲームに戻りてーからとだけ言ってさっさと行くから逆にゆっくり入ってやった。試験は7日からなんだから急いだって意味ないと思うんだよね。それにここの温泉はすごい!露天もあるしラドンもあるしサウナもあるんだよ?早く上がれるわけないじゃん。
私はどれだけ入ってもいいように飲み物を買って口笛を吹きながら脱衣室に入った。

「気持ちかったあ…キルア、お待たせー!」
「…何考えてんだおまえは」
「えー?あ、キルア!コーヒー牛乳飲む?飲むよね、飲もう飲もう!」

よーく冷えてるコーヒー牛乳をふたつ買ってひとつをキルアに手渡した。もしキルアが文字通りさっさと上がったなら、たぶん一時間は待ってるわけで。一応少しの罪悪感から私は百円のコーヒー牛乳で手を打つことにした。

「キルア、はい!」
「……おまえ、これ着ろ」

コーヒー牛乳の代わりに、なぜかキルアは着ていたトレーナーを渡してきた。…いや、暑いからタンクトップしか着てないんだけど。ゆっくり入らせてもらったおかげでぽかぽかなんだよ、私は。

「えっと…暑いんだけど…」
「俺がどんだけ待ったと思ってんだ、言うこと聞けよ」
「は、はい…すいません…」

仕方なく受け取って着てみると予想外に大きかった。袖口は指先がぎりぎり出る程度だしショートパンツもほとんど隠れるくらい丈も長い。キルアってほんとに男なんだ…あたり前だけど。

「…やっぱ脱げ」
「ん?」
「脱げって言ってんだよ!」
「えっ、着たばっかなのに?」

なんなのと困惑してると無理矢理脱がされそうになって、さすがにこれは絵面的にやばい!と思って急いで脱いだ。いつもキルアの考えることはよく分からないけど、頼むから理不尽な要求は勘弁してほしい。そして女の子の服を無理矢理脱がすのは見た目上非常にマズイということにも気づいてほしい。
結局さっき自分用に買ったばかりのパーカーを私は急いで着て、それでようやく落ち着いた。そして理由は謎だけどキルアは当然不機嫌になって、よく冷えていたはずのコーヒー牛乳をゆっくり飲んだ。キルアの機嫌は大体時間が立てばおさまる気がする。たぶん。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ