tesoro mio

□tesoro mio7
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岩石地帯からマサドラまでシャベルで岩山を削りつつまっすぐ進むという訓練の他に、私だけ体術の特訓があった。ビスケは教えるのがとても上手で、お兄ちゃんもビスケから教わったんだと思うとそのわずかなつながりが嬉しかった。時たまお兄ちゃんの話をしてくれるのも、私はすごく嬉しかった。私の知らないお兄ちゃん。ビスケの弟子としてのお兄ちゃん。
お兄ちゃんはやっぱりいくらか抜けていて、でもとても真面目だった。話を聞いて思い描くお兄ちゃんは、想像の産物なのに私の胸を強く叩いて。

「それにしても、あんたも随分ウイングに執心してるわね」
「えっ…そうかな…」
「仲のいい兄妹だわね。世の兄妹達の見本になれそうだわさ」
「それは…絶対なれないな…」

'兄妹'の見本なんて。私たちは必死にその事実を否定しようとしてきたんだから、皮肉だ。

「…ウイングとなんかあったの?たまにすっごく悲しそうな顔するわさ」
「そ、かな?気のせいだよ!なんにもないもん!」

無意識に指輪を抱きしめて、私はキルア達の元に走っていった。未練がましくお兄ちゃんを思い続けてることは、誰にも知られたくない。キルアにもゴンにもビスケにも、そしてお兄ちゃんにも。

修行だけの長い一日がようやく終わって、私はへとへとだった。キルアもゴンも疲れてはいるけど私ほどじゃなかった。

「○○、大丈夫?」
「うん…大丈夫…眠いだけ…」

今にもゴンに寄りかかって寝てしまいそうだったのに。
なにこれ!気抜いたら頭に石落ちるとか!寝れないじゃん!ビスケのドS!
私とゴンは何度も自分の頭に石を落として、私が呻く度に隣のキルアは起きたから翌日全員寝不足だった。

そして次の日の夜。昨日より大きくなった石に私は嘆いて、でも私よりキルアの方がもっと嘆いていた。

「おまえ早く慣れろよ、俺も寝れなくなんだからな!」
「うぅ…そんなこと言われても…」

確かにキルアには悪いと思うけど、私だって困ってるんだから!それに私だけじゃなくてゴンもじゃん!

「ゴンー!キルアが私たちのこといじめるー!」
「は?」
「えっ、俺も?」
「だってうるさくて寝れないって!」
「うるせーのはおまえだけだ!」
「なんでよ!ゴンだって痛い!とか言ってたもん!」
「ゴンはいいんだよ!おまえが…」
「私がなんなの!?」
「おまえが…っ、あーもういいから早く寝ろよ!」

納得いかない!と憤慨したかったけど、キルアはさっさと目を閉じてしまったし、私は本当に疲弊してたからあきらめた。そんなことよりキルアの言う通りなのはシャクだけど早く寝ようと、私も目を閉じた。

がん!

「ったい!!…うぅ、いたいよぉ…もう何回目だし…」
「…おまえいい加減にしろよ」
「ふぇ…だって…うぅ、キルア…眠いよぉ」
「俺もねみーんだよ!」

横を見ると怒ってるキルアと、今のところすやすや寝てるゴン。うぅ、ゴンの裏切り者…。そんなことを考えていたら、ビスケが突然爆笑し始めた。

「な、なに!?」
「知るかよ、ババアの考えることなんか…っ、いってえ!」
「キルア、あんた腕立て500回ね」

翌日全員寝不足だったのは言うまでもない。
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