tesoro mio

□tesoro mio7
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二週間で、ゴンとキルアは敵であるお兄さんを圧倒してしまっていた。私は何も出来ないままで終わってしまった。

「○○、ちょっと来なさい」
「ビスケ…」

二人から少し離れたところまでビスケは移動した。しょんぼりとしている私に、ビスケはやさしく声をかけてくれた。

「そんなに落ち込むことないわさ」
「でも…私役立たず過ぎるよ」
「うーん。あんたウイングに体術は教わってないの?ウイングはなかなか筋がよかったはずなんだけど」

そうだよ。私はお兄ちゃんの妹なのに。お兄ちゃんがあんなに強いのに、私はどうしてこんなに弱いの?

「教わったんだけど…試合の直前にやっつけみたいな感じだったかも…、でもこんなの言い訳だよね」
「ふむ。どんなことを教わったか簡単に教えて」

お兄ちゃんとの、あの夢みたいな日々を押し込めていた箱の蓋を、無用心に私は開けてしまった。洪水のように溢れる思い出の渦に呑み込まれそうになる。

「○○?」
「……あ、ごめん」

ビスケの声に意識は戻ったけど、頭の中はぐるぐると渦を巻いていて、なんとかビスケに教わったことを説明した。

「なるほどね。ウイングはよっぽど○○が大事だったみたいね」
「どういうこと…?」
「○○が教わったのは護身術の応用みたいなもんだわさ。防御に重きを置くもの。○○は戦闘に巻き込まれても逃げることは出来るかもしれないけど、自分より強い敵とは闘えない」

ビスケの言葉に固まった。嬉しいのか悲しいのか、分からなかった。お兄ちゃんがずっとそばにいてくれるなら、きっと嬉しいことだった。でも、お兄ちゃんはもういない。

「とにかく○○は体術の訓練だわさ」
「うん、分かった!お願いします!」
「それと、ここからが本題」

より一層真剣な顔をするビスケに緊張しながら次の言葉を待つ。

「どっちと付き合ってるの?」
「……ん?」
「ゴンとキルア、どっちと付き合ってるんだわさ!」
「はい!?」

なぜ突然こんな話題に!?しかも付き合ってる前提で話してるし!一体何で誤解されたの!

「あんたの気持ちはよく分かるわさ!純情な男の子の友情って滅茶苦茶にしてやりたくなるわよねえ」
「……なんかさらっとすごいこと言ってるような」
「何言ってるのよさ!それでどっちなの?」
「どっちとも付き合ってません!」

美少女の発想の恐ろしさに私は声を荒気てはっきりきっぱり言った。ああ、もう!きょとん顔の美少女かわいいし!

「だってあんた…じゃあ他に恋人でもいるの?」
「いないよ!なんなの!」
「じゃあその指輪は虫除けみたいなもの?」

ビスケは私の手を指差していて、私は今度こそ本当に固まった。何か適当なことを言ってしまえばいいのに、何も思いつかない。

「どうしたの?なに?こっぴどく振られでもしたの?」
「…ううん。ただ忘れられないだけなの」

見上げた夜空には細い細い三日月。お兄ちゃんも、同じ月を見てるのかな。そうだったら、いいのに。ほんの小さなつながりでもほしがってしまう私は、しばらく月を眺めていた。ビスケに声をかけられるまで、ずっと。
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