tesoro mio

□tesoro mio6
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通された部屋にはまさしく審査員に適した厳しそうなおじさんがいた。おじさんはほとんど興味のないような視線を私に送って、練を見せろと言った。
…えっ、練なの?

「あの…発でもいいですか?」

練だけじゃ絶対合格できない。と思う。
おじさんは発でもいいと言って、よく分からないけどこの人は意外とやさしいのかもしれないと思った。だって審査内容簡単に変えちゃうなんて。

私はまず飴を具現化させてから、取り出したポケットナイフでざっくり腕を切り裂いた。いたいいたい!早く飴!
飴をぱくりと口に含む。傷は一瞬でふさがって、床に垂れた赤い血だけが確かに腕が切れた証として残っていた。

「…合格だ」
「本当!?…あっ、すみません…ありがとうございます!」

やった!自信なかっただけにすごい嬉しい!
奥へと通された部屋にはしゃくれさんも美少女もいて少し驚く。キルアを見つけてすぐに隣にかけた。

「キルア!合格できたよ!」
「んなの言われなくても分かるっつーの。ほんとあほだな」
「ひどい…」

ぐちぐち言いたかったけど他の人もたくさんいるから仕方なく静かにした。
キルアのばか。喜んでくれてもいいじゃん、一緒に行けるんだから。

拗ね始めた私は、ゴンが部屋に入ってきたときあまりにも嬉しくてゴンに抱きついて喜びを示した。

「わっ、○○!」
「ゴン、やったね!一緒に行けるね!」

にっこり微笑んでそうだねと言ってくれるゴン。ああ、キルアと違ってなんて癒される…。

それから契約書を渡されて説明はほとんどなくて、すぐに解散になった。レオリオとの待ち合わせ場所に着くまで、私はずっとゴンにくっついていた。一方的にゴンの腕にへばりついていただけだけど。ゴンは最初こそどうしたの?と聞いてきたけど、私が答えずにキルアを冷たくあしらっているのを見て、あきらめたように小さくため息をついた。

「またケンカしたの?」
「ケンカじゃないもん!キルアが悪いんだもん!」
「放っとけよ、ゴン。どうせすぐ忘れっから」
「忘れないもん!キルアが謝るまでずーっと怒ってるもん!」

今日こそ直してもらおう、絶対。大体、いつもいつも私の扱いがひどすぎるんだよ!

待ち合わせの喫茶店に着くと、私は一目散にレオリオの隣に駆け寄った。

「レオリオ!キルアがひどいんだよ!?」
「なんだ、またケンカしたのか?」
「ゴンと同じこと言うし!」

レオリオに好きなだけ愚痴りたかったけどキルアとゴンがすぐに目の前のイスにかけたから、またしても私は仕方なくぶすっと黙った。
とにかく全員合格できたわけだから、お祝いに乾杯をして簡単にごはんを食べた。契約書をレオリオが読んでくれて各自サインをする。

ゼパイルさんと別れたときも寂しかったけど、レオリオと別れるのもやっぱり寂しい。でも、別れを惜しめば流れる時間はあっという間で。

ゴンが爽やかに次会うときはお医者さんだね!と言っていて、私もあんなふうにしなきゃと思っていとらレオリオに手招きされる。

「どうしたの?」
「いや、あのな…おまえらはとっととくっついた方がいいと思うぞ。恋愛ってのは、タイミング逃すとどんなに想い合ってようが上手くいかなくなることもあんだからよ」

きょとんとしてしまう私に、レオリオは大袈裟にため息をついた。

「…背伸びして俺に思いっきり抱きついてみろ」
「はい?」
「いいから早くしろ」

なんだか分からないけど最終的に抱きつく予定だったし、言われた通りに目一杯背伸びをして首に腕を回してぎゅっと抱きついた。直後にレオリオも私のことを苦しいくらい強く抱きしめてきて、どうしたんだろうと顔を覗こうとしたら、目閉じろとすっごく小声で言われる。不思議に重いながらも目を閉じて、後頭部に大きな手が置かれたときに、がん!という音とレオリオのうめき声がして目を開けた。
レオリオは頭をおさえてうずくまっていて、私はなぜかキルアに肩を抱かれていた。とにかくレオリオのそばにいこうとしたら、キルアに両肩をつかまれる。

「おまえは何考えてんだよ!?」
「えっ?なんの話?」

ゴンがレオリオに大丈夫?と駆け寄っていくのを横目で見て二人の話を聞いていたら、どうやらキルアに殴られたらしいことが分かった。こんなときこそ私の能力が!とまたレオリオのところに行こうとしたら、キルアにでこぴんをされた。

「いたい!」
「ちゃんと聞けよ、このばか!」
「…もう怒った。本っ当に今度こそ怒った」

いっつも我慢してきたけどレオリオにも理不尽な暴力振るうなんて、もう絶対許してあげない。
そう決意して、私はキルアの頬を派手にひっぱたいてやった。

「キルアは自分勝手すぎるよ!もう知らない!」

それだけ言ってレオリオとゴンの元に行くとレオリオがさっきより頭を抱えて、なんでこうなんだ…とつぶやいていた。
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