tesoro mio

□tesoro mio3
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再会してから全然ゆっくり時間を取って話せてなかったから今まで知らなかったけど、ゴンとキルアはバカ高いゲームを手に入れるためにオークションに参加するらしい。少しくらいならお金を貸してあげようと思ったら、桁が違った。なんだ、そのゲーム。売る気あるの?買う人いるの?

「それでオークションに参加するのに服をまだ用意してないんだ」
「うんうん」
「おまえ買ってきてくれよ。俺たちは出ない方がいいから」
「え、分かった」
「○○もオークション一緒に行こうよ!いいものあるかもしれないよ!」
「ほんと!?行きたい!ありがとーゴン!」

買い物はゼパイルさんと行くことになった。他の四人はみんな旅団に顔を見られてるらしい。

「そうか、○○も行けるのか」
「うん、そうなの!ゼパイルさん、私の服一緒に選んでね!」
「任せとけ!」

ゴンとキルアのはちびっこサイズを出してもらうのに少し時間がかかったけど、すぐに決まった。男の人って正装楽でいいよね、ほんと。

「あとは○○のだな。ドレスは…っと、ここだな」
「…すごい」

きらびやかなドレスが、思いつく限り全ての色で並んでいた。ここから一着を選ぶの?なんかもうどれでもいい気がしてきた。

「○○は若いし綺麗でかわいいからな。派手すぎないシンプル系がいい」
「あ、ありがとう…」

自分でも眺めるように何着か見て、どれもよく分からなくてすぐに戻す。こーゆーのを着たらちょっとは大人っぽくなるかな。お兄ちゃんにも大人っぽいって思ってもらえるのかな。

…なに考えてるんだろ、私

「どうした、暗い顔して」
「ううん、なんでもない…」
「とりあえず、これ着てこい。他にも何着か持って来る」
「これ…なんで…」
「ん?気に入らなかったか?」

渡されたドレスを手に立ちすくむ。鮮やかなブルーだった。

「なんで、この色にしたの?」
「ああ、指輪にブルーのラインが入ってるから好きかと思ったんだ。悪い、身につけてるもの見るの癖なんだ」
「ううん…。ありがとう、うれしい!着てくるね」

指輪は、本当は外した方がいいって分かってる。でもまだ、まだもう少しだけ。私はこの指輪に支えられてる。

ドレスは試着室でゆっくり着た。首もととスカートの部分がフリルになっていて、かなりかわいらしいノースリーブのデザインだった。襟とスカートの下の部分に黒が入って、確かに派手すぎない。でもシンプル、なの…?

「ゼパイルさーん…」

試着室から顔を覗かせると、ゼパイルさんはすぐに来てくれた。

「…見違えたな。○○はどうだ?」
「うん…えっと、似合うなら…これがいい、かな」
「似合うよ。あと、上に羽織るのと靴見に行こう」

ゼパイルさんのおかげで服はあっという間に決まった。一人で来てたらきっと選べなくて大変だった。よかった。

帰りは荷物がかなりかさばったからタクシーを拾った。ゼパイルさんにお礼を言おうとしたら、手にぽんと何かを置かれた。

「買い物お疲れさん。頑張ったご褒美だ」
「…かわいい!」

淡い水色のバレッタは本当にかわいかった。そっか。ドレスとか着るならこーゆーのも必要なんだ。さすがゼパイルさん!大人ってすごい。

「指輪は恋人からか?」

手の中のバレッタが、急に重くなった気がした。なにか、言わなきゃ。でも、なんて言えばいい?

「あー…、悪い。変なこと聞いたな。なんとなく聞いただけだから、気にしないでくれ」
「うん…」

薬指に光る青に、ゼパイルさんはいつから気づいてたんだろう。みんな、気づいてるのかな。

外したくない。外せない。

「…忘れられないの」

無意識に、そう言っていた。ずっと胸に閉じ込めていて、ずっと暴れていた気持ち。どうすれば諦められるのか、忘れられるのか。ずっと誰かに聞きたかった。

「別れたのか?」
「…二ヶ月前に、ね」

そうかと言ったゼパイルさんの言葉は、なぜか重みがあって、なのにすっと消えた。

「本気で好きだったなら、二ヶ月なんかで忘れられるわけないさ」
「…でも、ずっと苦しいの」

忘れた日なんかなかった。毎日、朝も夜もお兄ちゃんを想って苦しかった。会いたくて会いたくて、苦しくて切なくて。どんなに手を伸ばしてももう届かないのに、もうかなわない想いなのに。それでも何度も何度も私の心は、好きだと叫んでいた。

「恋ってのは厄介なもんなんだ。俺たち目利きにとってもな」

私の手の中のバレッタを取って、くるくる回しながらゼパイルさんは続けた。

「恋をすると、何もかもが輝いて見えちまうんだ。いつもなら目につかないような、どこにでもあるようなものもな」

バレッタを光にかざして、視線はバレッタに向いているのにゼパイルさんはどこか遠い別の場所を見ているようだった。

「逆に失恋をすると、何もかもくすんで暗く見える。価値のあるものも、大切なものも」

ゼパイルさんは一拍置いてから、バレッタを私に手渡す。

「そのバレッタは、どんなふうに見える?」
「…かわいい。本当に、とても」

気をつかって言ったとか、そういうわけじゃなく本当にかわいかった。あのドレスによく似合うんだろうと思う。

「なら、大丈夫だ。○○は気づいてないだけで、少しずつ回復してる。まだ時間がかかるかもしれないが、ちゃんと前を向ける日が来る」
「そうかな…」
「…あと、すぐ近くのものにも目を向けてみることだな」
「どういうこと?」

大切なものってのは、案外そばにあったりするものなんだ。

その言葉に、私はなんて言えばいいか分からなくて、バレッタを光にかざしてみた。光をうけているけど、心には響かなかった。また輝いて見える日が来るのかな。まだ、そんなふうには思えないけど。

ゼパイルさんはそんな私を見てほんの少し笑っただけで、あとはもう何も言わなかった
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