tesoro mio

□tesoro mio1
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「キルア…本当にゴンに会うの…?」
「あたりまえだろ」
「ゴン、怒ってるよね…?」
「さぁな。…おーい、ゴン!」

ひらひらと手を振るキルアの背中に素早く隠れる。あの天使のようなゴンに怒られるなんて、人としてだめな部類に入る気がする。そしてやさしい人ほど怒ると怖いって言うのはたぶん本当だと思う。怒られたことはないけど、お兄ちゃんは不機嫌になるだけで、他の人よりずっと怖かった。

「あ、キルア!ふたつ手に入れたよ!絵と、なんか木?みたいなやつ!」
「わり。ちょっとゴタついてなんも取れなかった」
「えっ?そうなの?……って、○○!?」

ああ!気づかれた!あたりまえだけど!
これは素知らぬ風を装ってどこかに行ってしまおう。なんかよく分かんないけど、私のせいでキルアは何かを手に入れられなかったらしいし。

「おまえ…またどっか行く気じゃねーだろーな?」
「えっ!?や、やだなぁ…そんなことしないしない…」

ふーんとか言ってるのに手首をつかむのはやめてほしい。手加減なしにつかまれるとホント痛い。

「○○、ひさしぶり!」
「ゴン…!」

ひさしぶりのゴンの笑顔は本当にまぶしかった。駆け寄ってくるゴンに避難しようとキルアの手をひっぺがして、私もゴンの元に駆け寄る。

「○○!…えい!」
「いたい!…えっ、なに?なんで?」

感動の再会と言えば、抱擁じゃないの!?なんで、でこぴんなの!?キルアに毒されたの!?
さらに立て続けにとりゃ!とか言いながらでこぴん連打をされる。

「いたい!いたいよ!」
「心配したんだから。反省するまで、でこぴんする」

また繰り出されようとするでこぴんを避けて、ゴンに抱きついた。

「ごめんなさい…何も言わないで…勝手にいなくなって、ごめんなさい」

ゴンは相変わらず子ども体温であったかくて、ぽかぽかだった。ぽんぽんと頭をなでられて、少しだけ体を離されて向き合う。

「しょーがないから許してあげる!もうしないでね?やくそく!」

そう言ってひさしぶりに指切りをした。最後に謎の誓いのちゅーがあって、ゴンは相変わらず天然たらしのままだった。

「それで、○○はヨークシンに何しに来たの?」
「えっと…遊びに、なんだけど…」

微妙な反応の私に二人が先を促すように見つめてくる。バカにされる気がするから言いたくなかったんだけど仕方ない。

ただ遊びに来た、というのは少し語弊がある。もちろん観光がてら来たんだけど、稼ぎに来た、の方が正しかった。
天空闘技場でかなりお金は貯まってたけど、やっぱり何かしらで稼いでいかなきゃいけないと思った私は、ものすごく安直な考えで念能力を編み出した。
紅茶味の飴を具現化させて、それを食べてから八時間以内であれば、私にとって価値のあるものが光って見える、という金のことしか考えていないような能力にしてしまった。
そしてしかもこの能力、全然使えない。だいたい、価値のあるものなんて落ちてないし、物で溢れてる世の中そこら中がぴかぴか光る。
つまり、フリーマーケットとかこういった値札競売市、運が良く落っこちてる物にしか使えない、というバカ丸出しの能力な訳で…、という説明を私は二人にした。

「へー、おもしろいね!」
「…そうか?」
「ゴンはホントやさしい!」

そんなおしゃべりをしながら、他にも何個か私の能力で価値のある物(と思われる物)を手にいれて、だいたいいくらぐらいになったのか知りたいと二人が言って、通りがかった胡散臭い店に見てもらうことにした。
店主の話だとほとんど価値のあるもので、ゴンが手に入れた謎の木だけは価値がないということだった。他の物を安く売ってくれるならその謎の木を高く買ってあげると店主が提案してきたときに、突然すごい眉毛のお兄さんが話に割って入ってきた。なんでも謎の木にはものすごい価値があるらしい。
助けてくれた眉毛お兄さんはゼパイルさんと言って、お礼に食事をご馳走したらいろいろこれから手伝ってくれるらしい。世の中いい人意外といっぱいいるよね。さっきのお店の人は悪い人だったけど。
そうして市に出す手続きとかを終えてゼパイルさんの話を聞いてるとき。ゴンの携帯がなって、話の内容はよく分からなかったけど急用みたいだった。

「行こう!」
「ああ。…○○も今は連れてくか」
「今はってなに。今はって」

雑な扱いに文句を言おうとしたらまた無理矢理走らされた。子どもより走るの遅いとか情けなくて悲しい。

着いた先はカフェだった。長身のお兄さんと待ち合わせだったらしく、簡単な自己紹介だけしてついていけない会話をとりあえず聞いておいた。
三人で深刻な顔をして話してるから、たぶん大変な話をしてるんだろうけど聞いてる限りだと蜘蛛の話らしい。いかんせん何がなんだか全く分からないし、蜘蛛の話なんか聞きたくない。私は虫が大嫌いなんだ。
窓からカフェでのんびりしてる人たちを眺めていると、ものすごくかわいい女の子を発見した。つり目かわいい系美人。でも一緒にいる人がなんか怖い。あんなにかわいい彼女なんだからやさしくしてあげればいいのに。
そんなことを考えてたら、急にビリビリ肌に刺さるような空気がきて、思わず隣のキルアにしがみついた。

「なに、これ…」
「普通にしてろ。大丈夫だから」

全然大丈夫にはとても思えなかったけど、とりあえず言われた通りにする。よく分かってないのは私だけで、三人はまた顔を会わせて話始める。怖くてもう外は見れなかったから話に集中してると、ゴンとキルアで誰かを尾行するらしい。

「キルア…私は?」

こんなに怯えてる私を放り出してどっか行ったりしないよね?みたいな目で見つめる。

「あー…、おまえさ、幻影旅団て知ってる?」
「さすがに知ってるよ、それぐらい!」
「今からそいつらを尾行すっから」
「…じょーだんだよね?」
「いや、マジで。だからこのおっさんと待ってろ、意外といいやつだから」

おっさんじゃねえ!とお兄さんが言ってるけど、それどころじゃない。ゴンとキルアの手に負えるような相手とはとても思えない。キルアとゴンを交互に見ると、二人とも本気の顔だった。

「待って…だめだよ、やめて…危なすぎるよ…」
「○○、俺たち無事に帰ってくるから!だから心配しないで!」
「でも…やだよ…心配するよ」
「心配すんなって、無茶はしねーから」

結局私は二人を止められなくて、さっき出会ったばかりのお兄さんと二人きりになってしまった。二人のことを心配してる私に、ゼパイルさんと合流するまで、お兄さんはずっとやさしい言葉をかけてくれた。
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