my dear
□my dear
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チョコロボくんとまだ作ったばかりの夕飯を手にもってキルアの部屋のドアをノックする。
大丈夫。ちゃんと誠意を持って話せば分かってくれるはず。そう自分に言い聞かせる。
「…なに?」
開かないドアの向こうから、冷たい声が届く。
「…渡したいものがあるの。入っていい?」
沈黙がひどく痛い。
もう一度声をかけようとしたときに、ドアが開いた。
目で入るよう促されて、足を踏み入れる。キルアが椅子にかけたから、向かいに座る。
「これ、キルアに食べてほしくて」
テーブルにチョコロボくんとまだ温かいごはん。
結局なんで怒ってるかは分からなかったから、謝ることはしないでなんとか謝罪の気持ちを伝えたかった。キルアにとってとんでもなく腹が立つことだったなら、とにかく自分が精一杯歩み寄ろうと思った。
紙袋の中からタッパーを出して、いぶかしげな顔をされる。
「なんだ、これ?」
タッパーが2つとパンの入った袋が1つ。
「これがね、鶏のトマト煮で、こっちがかぼちゃのサラダ!それにバケットなんだ」
意外なものだったようで、ふーんと言いながらタッパーの蓋を開けられる。
「食べてくれる?」
言ってから、なんだか目をあわせるのが気まずくてテーブルの上においた手に顔を向けた。また沈黙。キルアとの沈黙がこんなに苦しいなんて思わなかった。
「食うよ」
「…ほんと!?」
椅子から立ち上がりキルアの手をとって、ありがとう!と言う。思った以上に嬉しくて、ほんとはキルアに抱きつきたいくらいだったけど、我慢。
「…は」
「は?」
と、吹き出すように笑い出すキルア。なぜだかまた分からなかったけど、久し振りのキルアの笑顔が見れて、一緒に声をあげて笑った。
くだらない話をいくらかして帰ろうとしたら、一緒に食ってけよと言われてじゃあ部屋から取ってくると部屋を出ようとすると、ゴンの分もある?と聞かれて、最終的に三人で食べることになった。
ゴンは大げさなぐらい美味しい!と言って、キルアもそれに合わせて、まぁ悪くねーななんて言ってくれた。
ごはんのあとも、ゲームをしたり二人の話を聞いたりして、気づかないうちに寝てしまっていた。