my dear

□my dear
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自室の鍵を閉め、寝室に向かいベッドに飛び込む。今すぐと枕に顔をうめて思う。今すぐ、あの宿へ戻って、もう一度抱きしめられたい。お兄ちゃんの雰囲気に包まれていたい。
でも、そうしてはいけないと頭が否定する。

ドアをノックされる音で、現実に引き戻された。ベッドから起き上がり、のろのろと向かう。鍵を開けてドアをひらくと、ゴンとキルアがいた。

「○○!…泣いたの?」

ゴンに言われて目もとをさわると、確かにぬれていた。気づかないうちに泣いていたようだ。

「…なんでもないの。」
「…なら、そんな顔すんなよ」
「○○、何があったの?」

二人の優しさにまた泣きそうになる。なんだか涙腺がゆるんでるみたいだ。

「ありがとう。入って」

招き入れてから、冷蔵庫へ向かってお茶をだす。二人がかけているテーブルにお茶をおき、コップを出してついでいく。自分もかけて、お茶を飲む。
久しぶりに飲んだストロベリーティーを思い出して、おいしかったなと思う。

「○○、ウイングさんが○○のお兄さんてほんと?」
「!…お兄ちゃんに聞いたの?」
「おまえのこと話しに言ったときに聞いたんだ」
「…ウイングさんに○○には伝えずに連れてきてくれって頼まれてたんだ」
「そう…」

コップを手で包んで窓から外を眺める。夕焼けが町を赤くそめていて、なんだか過去に置き去りにされているように見えた。

「お兄ちゃんは、急に家を出ていったの。なぜかは分からない。誰にも理由を言わなかったから」

もう五年も前のことだけどねとつぶやいて、お茶を口に含む。全然味がしなかった。

「お兄ちゃんが出ていってからすぐに家を飛び出して、ずっと探してたの。」
「そっか。お兄さんを探してたんだね。」

ゴンの優しい声に自然とほほえむ。
でも、うまく口角が上がらなかった。

「会って、びっくりした。…全然変わってなくて。まだこんなに…」

はっとして口をつぐむ。
つとめて明るく続ける。

「明日から念の修行で、毎日会えるから嬉しい!やっと会えたんだもん」
「そっか!よかったね、○○!」

うんと今度はちゃんとほほえむ。
たぶんうまくできた。

「でもさ、俺びっくりしたよ!○○とウイングさんが兄妹だって聞いたとき!」
「俺もけっこーおどろいた」
「あんまり似てないからねー」
「いや、全然似てねーし」
「そう?俺は優しい雰囲気とか似てると思うけどなぁ」

二人とおしゃべりをして楽しいのに、気分は晴れなかった。胸の奥が、苦しかった。
まだこんなにもお兄ちゃんが好きだった。
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