my dear

□my dear
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乱暴に腕をはずされて、涙がぽろぽろこぼれた。腕が宙をさまよう。

「おにいちゃん…。…!」

正面から強く、強く抱きしめられた。髪にお兄ちゃんが顔をうずめてきて、あつい吐息がかかる。頬に手をそえられて、顔を上げられ、顔がすぐそばまで近づけられる。苦しそうな顔をして、体を離された。

「…疲れただろうから、今日は帰って、ゆっくりしなさい。」
「…はい」

すぐに背を向けられたから、お兄ちゃんがどんな表情をしているのかは分からない。拳を強く握りしめていることだけ分かった。
帰りたくないと思う。そばにいたい。でも、明日また会えるのだからと、重たい足を引きずるようにして玄関へ向かう。振り返りたい気持ちをおさえてドアに手をかけて、ドアの重たさに驚いた。来たときはキルアが開けてくれたんだと気づいた。振り返らずに、明日からよろしくお願いしますと言う。返事はなかった。あんなに重たかったのに、ドアはパタンと小さな音をたてて閉まった。
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