my dear
□プロローグ
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コンコン
ドアのノック音で本から顔をあげる。
時計を見ると夜の10時だった。
「どうぞ」
ドアが開けられ、ウイングが入ってきた。
「読書中だったかな?」
「お兄ちゃん!ううん、ちょっと休憩してたとこ」
そうと一言つぶやいてお兄ちゃんはベッドに腰かけた。なんだか暗い顔をしている。
「…お兄ちゃん、なにかあったの?」
はっとしてこちらを見つめたお兄ちゃんと目が合う。本当にどうしたんだろう。
「家を出ることにしたんだ」
「え…?」
訳がわからず、ただ呆然とした。
「○○に、伝えておきたいことがあってね」
「…なに?」
お兄ちゃんはおもむろに立ち上がると、私の手をとって椅子から立ち上がらせた。頬に優しく手をあてられ、唇に柔らかな感触があたる。
「!」
驚いて目を見開く。
すぐに唇が離された。
「○○が好きだ」
きつくきつく抱きしめられて、真っ白になっている頭を回転させようとする。
「…困らせてしまってすまない。もう、行くから」
ゆっくりと、背中に回っていた腕がはなされる。
「待って!やだ…行かないで…」
首をふるふると横にふり、泣きそうになりながらお兄ちゃんの腕をつかむ。優しくて悲しそうな笑顔を見つめる。
「○○の幸せを願っているよ」
首に鈍い痛みが走り、意識がとんで崩れ落ちた。