謀と惹かれ逢えば偶然の下に

□Coincidence.13
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かかってきた一本の電話は、あたり前だけど、予測できた事態だった。ちょっとバカな私でもすぐに想像のつく内容のそれは、考えたくなかったのかもしれない。
いや、考えたくないんです、ごめんなさい。




読みやすく綺麗にまとめあげたメールの文章を読み返して、あとは送信するだけだと何度も脆い決意をするんだけど。びびりでへたれで、さらには情に脆い私は、とてもこのメールを送る気分になれなかった。そう、この件名が、幻影旅団について、というメールを。

報酬がバカみたいに高いわけだから、しかも長期に渡る依頼なわけで、月に一度の報告があってあたり前だった。ただ、そういうことは事前に言っといてほしい。それか早めに言ってくれ。急に二十四時間以内に送れとか勘弁してほしい。

ああ、どうしよう…。どうしようも何も送んないと私の命が危機にさらされるわけだから、送るしかないんだけど!そう、これは正当な自己防衛…!って思いたいのにー…思えるわけないしー…。

「おい、さっきから変なうなり声がうるせえんだよ」
「ぬああ!?…って、フィンか…びっくりした…」

なんだ、その言いぐさは!と、フィンが腕をぐるんぐるん回しながら怒鳴ってきたけど、それどころじゃない。
こいつのせいで、びっくりして、送っちゃったよ!!

「ちょ、フィン!!このバカ!!」
「あ?なんだよ、なんかあったのか?」

ただならない私の様子を察して切り替え早く心配してくれるフィンは本当チェリーボーイだなあ…ってのんきに思ってる場合でもない!!どうしよう!!
……どうしようも、ないな。

びっくりしすぎて興奮が一周回って帰ってきた私は、急激に冷静になった。なんていうか送っちゃったものはどうしようもないし、というか元々そのためにここにいるわけだし(ちょっと原因と結果がおかしいけど)、そして私は仕事しなければいけないし。人生そんなうまくいくことばっかじゃない。極貧生活送ってきた私は知ってる。

「まあ、いいや。フィンのせいだけど、まあ、許してあげる。仕方ないよね、ね?」
「あ?知らねえよ。まあ、とにかく俺は関係ねえからな、いいな?」

お互いに過失から逃げようとするのって、すごいバカっぽい…。そんな気の抜けたことを考え始めた私は、背後に迫る気配に一瞬で土下座した。もしかしたら世界最高の土下座スピードだったかもしれない。そのぐらい、敗北を一瞬で悟るほど、恐ろしかった。
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