tesoro mio

□tesoro mio22
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ゴンが好き、なんて、何度も何度も言ってきたけど。大好きだよって、そう抱きついたことだって、数えきれないくらいある。
だから、そう、きっとゴンのも、そーゆーことだよね?



私の指に自分の指を絡めて手を繋いでくるゴン。大好きだよと、胸を騒がせる笑顔と一緒に告げられる言葉は、これで今日三回目。つい目をそらしてしまうと、ちゃんと聞こえた?聞こえてないならもう一回言おうかな、そんなふうに、顔を覗きこんできて無邪気なのに意地悪さを含む笑顔で、小声でささやくように言ってくる。

「…っ、ゴン…聞こえてる、から!」
「じゃあ、こっち見て。俺、○○の困ってる顔も大好きだから、見せて?」

なんでドSになってるの、ゴン…意味分かんないよ…。そんな満面の笑みで言われたって、言ってることのひどさは何も変わらないんだから!

「…もうっ、ゴンなんか知らないー!」

丸一日続いたゴンの天然で意地悪なアプローチに、私は散々神経をすり減らされていて。無理矢理振り払った手を、助けを求めるように私はキルアに伸ばしていた。
そして向けられる面倒くさそうな目。

「…なんだよ」
「なんだよって…、うぅ…キルアのきちく…鬼…ドSの化身…」

私が困ってるの知ってるくせに、キルアは知らん顔で何も言ってくれないし、ゴンが私に何度も接近してきても、目を向けることすらしてくれない。
こーゆーときって、普通、彼氏が助けてくれるものなんじゃないの!
颯爽とかっこつけてさ!

「キルアは、…私のことなんか、どうだっていいんだ…」
「…なんでそうなるんだよ」

そうなるよ、すぐにそう言い返したいのに。なんだかもう冷たすぎる対応が悲しすぎて、目頭が熱くなってくる。私はこんなにキルアが好きなのに、キルアは全然、私を想ってくれない。

「おい…、なんで泣くんだよ」
「…分かんないよ」

キルアの腕を、一度だけきつく握りしめてから、私はとぼとぼとキルアから離れた。
吹き抜ける風すらやさしいのに、キルアは全然やさしくない。好きだから、少しくらいやさしくしてほしい。好きだって、キルアからちゃんと、時々でいいから、言ってほしい。
もうよく分からない。キルアの態度は、とても私を好きなようには思えないし、私が甘えても、全然嬉しそうじゃない。

もうビスケには相談したくないし(面白がられるから)、ゴンもキルアも駄目だし。誰に…、レオリオ!
不意に頭に浮かんだ、あの穏やかで、でも明るくて元気をもらえる笑顔を思い出して、私は瞬時に電話をかけた。

お掛けになった電話番号は、電波の届かないところか、電源が…

うわあん!レオリオのばかあ!
なんで出ないのよ!一体何してるのよー!なんで電源切ってるのお!

ぐすんと涙ぐみながら、他に相談できる人…というか相談したい人、をアドレス帳から探していて、そうじゃん!と思わず自分につっこんだ。

お兄ちゃんに、相談しよう!

そうだよ、私。お兄ちゃんなら、きっとやさしくアドバイスしてくれる。ちゃんと一緒に考えて、筋の通ったちょっと理屈っぽい的確な指摘をしてくれる。なんで気づかなかったんだろう!

「…、あ!お兄ちゃん?」
「久しぶりだね、○○。元気にしてたかい?」

染み込むようにひびく声は、私の体中に安心感をもたらしてくれる。いつだって、私の味方になってくれる、やさしいお兄ちゃん。

「…っていうことがあってね。なんかもう悲しくて…キルアなんかって…」
「……泣いたんだね?」
「ん…?うん、ちょっとだけ…ってあれ?お兄ちゃん?」

突然ぷつん、と通話が途切れて、切られたことに気づかずに、何度かお兄ちゃん、と無意味に携帯に呼び掛けてしまった。しばらくして画面を見て切れていることに気づいたあと、どうしたんだろと、ぽつりと独り言をつぶやいていた。

「何かあったのかな、お兄ちゃん…」
「へえ、何があったんだよ」

これは…見なくても、分かる。キルアはどうやら大層ご立腹らしい。言葉のとげとげしさよりも、何よりも、襲い来る不機嫌オーラに窒息させられそうだから。

「な、なに…どしたの…」
「大事な兄貴と何話してたわけ?」

分かった。私、今日、人生最凶にツイてないんだ、きっと。
背筋が凍えるほど冷たい笑顔を向けるキルアに、そう思った。
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