tesoro mio

□tesoro mio21
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次の日も、キルアとゴンの冷戦状態のけんかは続いていた。ビスケとキルアに相談した私は、やっぱり何か頼る必要があるときはキルアにお願いすることにして、でもゴンと距離を取ることなんかしたくなくて何度か話しかけに行った。くだらないことだったり、修行とかゲームのことを話したりして、それとなくゴンの気持ちを聞こうとした。けど。
なぜか変にゴンがよそよそしく、そして不機嫌だった。昨日は私に接する分には不機嫌じゃなかったのに、一晩経ったらキルアと一括りでけんかの相手みたいになっていた。なんでゴンがそんな態度を取るのかも分からなかったし、どうすれば解決するかも、今度こそ途方にくれるほど分からなかった。

「私、ゴンに何したんだろ…」
「なんで何かしたって決めつけんだよ。何もしてねーかもしれないだろ」
「ゴンは理不尽な理由で怒ったりしないもん、絶対何かしたんだよ」
「ゴンはってなんだよ。おまえも俺のこと理不尽だって思ってるわけ?」
「それはいいから!そんなことより、何だと思う?ねえ、キルア」
「…分かるわけねーだろ。とにかく、何もしてなくても、怒ることがあるんだって理解しろよ」
「………?」

大きなため息をつくキルアを放って、私は今日何度目かの冷たいゴンに勇気を出して話しかけに行った。やっぱり本人に聞かなきゃ分からないし、ゴンなら分かってくれる気がするから。

「ゴン!」
「…なに?」
「う…、ねえ、今日なんでそんなに不機嫌なの?私、ゴンに何かした?」

むっと眉を寄せて口をきつく結んだゴンは、なんだか怒ってるよりも悲しそうに見えた。怒り3に悲しみ7ぐらい。

「ゴン…、私どんくさいからきっと分かるのにすごい時間かかっちゃうと思うんだ…だから、お願い。なんで怒ってるのか教えて?」
「………やだ、教えない」
「なんで…?」
「…俺が、言いたくないから」

そう言って、すたすた背中を向けて行ってしまうゴンのその背中が、いつもよりずっと小さく見えて、昨日キルアと約束したばかりなのに、気づいたときにはゴンをうしろから抱きしめていた。びくりと体を震わせたゴンがやけに悲しくて、なぜか泣きたくなってしまう。

「ゴン…どこにも行かないで…。ゴンが一緒じゃないと楽しくないし、悲しいよ」
「なんで…、なんで俺にそんなこと言うんだよ!」
「え…?」

いきなり振り向いてきたゴンに思わず回していた腕を外すと、逆に抱きしめられた。苦しいくらい、痛いくらい、強く私を抱きすくめる腕は力を緩めてくれなくて、どうしたらいいのか考える思考力すら捕らえられてしまう。

「俺は…、○○が傷つかないなら、笑ってくれるなら、それでいいって思ってたのに…」
「…ゴン?」

「おい、何してんだよ」

ゴンの腕の中で顔だけ声がした方に向けると、無表情なのにかなり怒ってることが一瞬で分かった。少しだけ離れたところにいるキルアは、約束を破った私に怒ってるのかと思ったのに、その矛先はゴンだった。見据えた先が、ゴンだった。

「何してんだって聞いてんだよ」
「キルア、ちょっと待って…怒んないで…、別に何でもないから…」
「何でもないわけないじゃん」
「えっ?」

またこんなときにまさかの発言しないでよ、ゴン!間に挟まる私の身にもなってよ!

「へえ、じゃあ何?」
「キルアには関係ないよ」

キルアに向き直ったゴンは私を離して、でも頑なに話す気はないみたいだった。この冷戦状態がいつ爆発するのかが怖くて、私はとにかく隣にいるゴンに賭けた。

「ご、ゴン…、その、関係ないって言うのはちょっとひどいんじゃないかな…」
「○○だってそうだろ!俺のことなんかどうでもよくて、だから昨日の夜…」

昨日の夜?私ゴンに何かしたっけ。
困惑した頭でゴンを見たら顔を背けられて、助けを求めようとキルアに目を向けたらさっきよりもずっと怒ってて、思わず後退りしそうになったのを私はなんとかこらえた。

「おい、昨日の夜、何だよ。言えよ、ゴン」
「…っ、俺に聞かせるために抱いたんだろ!」
「………ええ!?」

聞こえてたの…!?やだ…やだもう…、穴があったら入りたい…。
へなへなと足の力が抜けて地面に座り込んで、そう言えばビスケが気づいてるんだから、人間の能力からかけ離れてるゴンの聴力なら聞こえてて当然だとひとり後悔しながら納得した。

「俺がどう思うか、キルアは分かっててやったんだろ!」
「なわけねーだろ。てか、やっと認めるわけ?」
「俺が言わなくたってキルアは気づいてただろ!俺が○○のこと好きだから、ずっと○○を俺に近づけないようにしてたくせに!」
「………は?」

怒りをあらわにしたゴンと、静かに怒りを抱えてるキルアを交互に見比べて、私はなんとか立て続けに判明した事実を理解しようと混乱していた。
白熱していく二人の言い争いに、もう口を出す余裕はまるでなかった。

「やっと、言ったな?おまえの考えなんか隠したって俺には無意味なんだよ。どうせ○○が傷つくからとか思ってたんだろ!」
「キルアのが何も分かってないだろ!俺は、キルアを、傷つけたくなかったんだ!」
「は…?」
「…そうだったんだ」

何がなんだかよく分からないけど、とにかくゴンはキルアを傷つけたくなくて、私を好き…?なことを隠してたらしい。そしてキルアはゴンの気持ちに気づいてて、ゴンが言ってくれないことに、たぶん拗ねて怒ってたらしい。

「俺は、キルアが好きだから…絶対嫌な思いなんかさせたくなかったのに…」
「…俺だって、ゴンが大事だから…抱えて苦しませたくなかっただけで…」

…ん?え、なにこの展開。
急激に茅の外に追いやられた私は、恥じらいながらなぜか赤面していく二人を、ただ呆然と地面に座り込んだまま眺めていた。
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