tesoro mio

□tesoro mio20
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夜、ゴンが寝てしまってから、私は隣に寝ているキルアにそっと呼びかけた。

「キルア…」
「……なに?」

うっすら目を開けたキルアの服を引っ張って、ちょっと話したいことがあるからと小声で言って離れた場所まで移動してもらった。

「話ってなんだよ」

無愛想な言葉と不機嫌な声。でも、繋いでくれる手はやっぱりやさしい。

「あのね、えっと…私ね…」
「…」
「その…私…、私ね…」
「…なんだよ」
「…キルアが本当に好きなの」

何度も言ってきたはずなのにどうしようもなく恥ずかしくなって、私はうつむきがちになんとか言った。キルアの表情は分からないけど、何も言ってこないからびっくりしてるのかもしれない。
でも、でもね。

「私ね、ゴンのことも、もちろん本当に大好きなの」
「…」
「でもね、キルアだけなの。キルアにしかドキドキしないし、キルアじゃないと、その、キスしたいとか…思わないし…」
「…それで、おまえは何が言いたいわけ?」

口調は冷たいのに、私を抱きしめたキルアは熱いくらいで、その熱が伝わるとくらくらする。キルアの肩をぎゅっとつかむと、それだけで気持ちがあふれそうだった。

「私はキルアと恋人でいたいの…たとえば、ゴンが嫌な思いをしても」
「…」
「キルアは?ね、キルアはどう思って…んんっ」

無理矢理ふさがれた唇は、荒々しいのにやさしくて、自然とたかぶる気持ちがわきあがってしまう。お互いの吐息が熱くて、何度も何度も唇を重ねた。

「…っ、キルア…」
「俺は…、おまえが俺以外のやつにべたべたくっつくとこなんか見たくねーんだよ」
「え…?んっ…」

やさしく触れるだけのキスが落とされて、そのまま唇でなぞられると、吐息がかかるのもなぞられるのも、苦しいくらい体が痺れてしまう。

「もう、他のやつに抱きついたりすんな…したいなら俺にしろよ…」
「ん…わかった…」

独占欲だとか嫉妬が、あまりないと思っていたからそれはやっぱり驚いた。だって、お兄ちゃんのところに行かせたぐらいだから、キルアはそういうことには淡白なのかと、思ってた。
頬にまぶたに、次から次へと落ちてくるキスに、私と同じなんだとくらくらする頭でぼんやり思った。
前にキルアとビスケが仲良くしたときに、あれだけ苦しい思いをしたのに、私は全くどんくさい。

「じゃあ、ゴンと仲直りしてくれる?」

キルアの背中に腕を回しながらそう言って、しぶしぶ分かったと言ってくれると思っていた私は、急に体を固まらせてキスをやめてしまったキルアをきょとんと見上げた。

「キルア?」
「おまえ、ほんとなんも分かってねーのな」
「えっ、分かってるよ!」
「…分かってねーよ。最初の原因はおまえだったかもしれねーけど、けんかの原因はもうそこじゃねんだよ」
「…じゃあなんでけんかしてるの?」

おまえは分かんないままでいんだよ。
そう言って再開されたキスはもう止まらなくて、だめだと何度も言い張ったのに結局キルアの言いなりになってしまった。翌日ビスケに散々からかわれて、私は本当に恥ずかしくて死にそうになった。年食ってるとどうして恥じらいがなくなるの。
 

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