tesoro mio

□tesoro mio19
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もちろん、ゴンとキルアはしょっちゅうけんかをしてた。日常茶飯事のそれはほとんどがくだらないことで、少したてばいつも自然と解決してた。だから、今回もそうだと思ってた。いつもみたく、キルアの口の上手さにゴンがしぶしぶ納得するとか、ゴンの押しの強さにキルアが冷静になって妥協するとか。そんなかんじになると、思ってた。



いつもなら楽しくあっという間に終わるはずの修行が、今日は終始最悪だった。ほとんどの時間に沈黙と重苦しい空気が流れて、私がどちらかに話しかける度に意地の張り合いのような言い争いが起きた。

「ゴン、これ向こうに運ぶんだけど…」
「うん、いいよ!」
「○○、こっち来い。おまえは俺に頼ってればいんだよ」
「えっでも…、じゃあキルアに…」
「○○!キルアの言うことなんて聞かなくていいんだよ!」
「はあ?ゴンは黙ってろよ。○○が俺に頼るのは当然だろ」
「あの…けんかしないで…」

こうなってしまうともう私の声なんて二人の耳には入らなくて、散々言い争った末にビスケが止めにきてくれてなんとか収まった。ビスケもすぐに止めてくれればいいのににやにやと楽しんでるから本当にたちが悪い。

一度目で学んだ私は、今度はキルアに頼もうと話しかけに言って、瞬く間に後悔した。

「キルア、あのね、さっき…」
「ああ、なに?」
「○○!キルアに頼み事なんてしちゃだめだよ、絶対理不尽なことされるんだから!俺と一緒に行こう?」
「えっ、えっ…そんなことは…」
「いちいちうるせーな!俺がいつ理不尽なことしたんだよ!」
「いつもしてるよ!俺がやめろって言っても全然聞かないだろ!」
「やだもう…誰かたすけて…」

頼みの綱のビスケは意地悪くにんまりと眺めていて全く頼りならないし、私の話はまるで聞いてくれないしで、本当にひどい一日だった。
とにかく問題を起こさないようにと私は口をかたく閉じて、どっちにも話しかけるのをやめた。ひたすら沈黙が続く中、一体どうしてこんなことになってしまったのかと延々考え続けて、キルアに妥協してもらうべきなのか、はたまたゴンに折れてもらうのか、年の功でビスケに頼るのか、ととにかく二人が仲直りする方法を思いつく限りあげてみて、どれもうまくいきそうになくて余計元気がなくなる、という悪循環を繰り返していた。

ひとりもんもんと悩んでいることに頭がパンクしそうになった私は、無意味だと思いつつも、やっぱりビスケに相談しにいった。端から見てる人の方がいい意見をくれそうな気がするから、たぶん。

「…だからね、まずキルアが謝った方がいいのか…でも無理そうだし…でもゴンなんてもっと頑固な気がするし…」
「あんたさっきから同じことぐるぐる話してるって気づいてる?」

あきれたように言うビスケ。そんなこと言わないで、なんかアドバイスちょうだいよ!年食ってるんだからさ!

「まあ、はっきり言って○○が悪いわよ」
「………えっ!?私が悪いの!?」

私、なんにもしてないのに!
完全なる被害者だという気持ちを込めて見つめると、ビスケは小さくため息をついてから地面に何かを書きだした。なんで、と聞きたくなるのを我慢してビスケが書いていく様子をじっと待っていると、それは私とキルアとゴンの、三人の相関図みたいだった。

「はい、よく見て」
「うん…?」
「まず、あんたたち三人は友達なわけだわさ。○○はキルアもゴンも好きだし、キルアとゴンもそうなわけ」
「…はあ」

三角形の頂点のように書かれた私たち三人のあいだに、直線が引かれていく。全員がつながったそれは、対立するようなことはなく、仲のいい関係図の基本みたいだった。

「問題はね、○○とキルアが恋人関係にあるってことなの」
「…そうなの?」

きれいな三角形になっているところに、ビスケは長方形を書き足して、私とキルアだけをその長方形の中に入れてしまう。ゴンだけ、ぽつんと外にはみ出す。

「…なんか仲間外れにしてるみたい」
「うん、まあ…○○にしては悪くない捉え方だけど」
「どーゆー意味ですか、ビスケ先生!」
「とにかく、○○はキルアと付き合ってるわけよ。それをあんたはちゃんと理解してないんだわさ」
「理解してるよ!私はキルアが好きだもん!」
「はいはい、だからよく見て」

とんとん、と地面に書かれた相関図を見るようにビスケが指先でたたく。

「さっき仲間外れにしてるみたいって言ったわよね?」
「うん、だってゴンだけひとりで…みんな一緒がいいに決まってるよ!」
「じゃあ、この枠の中にゴンは入れると思う?」

ビスケが指差したそれは、私とキルアだけを囲っている長方形で、それは恋人だということを表しているもののはずで。そこに、ゴンを。

「………入れない、よね」
「そうね。○○が二股するなら入れるけど」
「…全然おもしろくないよ、それ」
「あたしはとってもおもしろいけど。そうなったらもっと楽しくなるわさ!」

それだけで一日中遊べるわさ!とかなんとか楽しそうに話してるビスケを無視して、私は地面に書かれた相関図をじっと見つめていた。その相関図の私を見ていると、なんだか悪いことをしてる気分になるのに、でもキルアと私を囲うその長方形にどうしても嬉しく思ってしまう。全員でこの長方形の中には入れない、なら、それはどういうことになるんだろう。仲間外れじゃなくて、でも、一緒にはなれない、それは。
 

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