tesoro mio

□tesoro mio7
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ゲームの世界とは思えないほどリアルなこの場所に来てから数日が過ぎた。スペルカードを手に入れるために魔法都市マサドラに向かっていたとき、あの美少女が声をかけてきた。小動物のように弱々しく仲間にしてくださいと言う姿に女である私ですらくらくらした。これはゴンもキルアもやられたに違いないと思っていたら、キルアはジャマだからの一言で美少女を固まらせた。相変わらずすごい殺傷能力で。いつも言われてる私だって悲しくなるのに美少女はさぞ衝撃を受けたことだろう。
と思いきや美少女はめげなかった。それなりに飛ばして走っている私たちに美少女はぴょこぴょことついてくる。さすがに不憫に思ってキルアを説得しようとしたら、おまえは自分の心配だけしてろよとこれまたひどいことを言われた。確かに弱いけど、そんなはっきり言わなくても。

山賊の村をなんとか通り抜けて岩山にたどり着くと怪物ゾーンに入った。二人の動きを見よう見まねに真似してみるもやっぱり元々の戦闘センスの差がひどすぎた。それでも楽しく遊ぶように怪物から逃げたりしていると、美少女が大男ばりの大声で凝!と叫んだ。
岩山から降りてきた美少女は先程と一変してどこのお国言葉か知らないけど微妙な話し方で厳しい言葉を私たちに浴びせる。私はその変貌ぶりに驚いて話どころじゃなかったけど、美少女改めビスケが私が指導してあげる!と言ったときにゴンが俺たちにはウイングさんがいるからと言って、それだけで私の意識は過敏に反応した。

「ウイング?ウイングは私の弟子だわさ!」
「お兄ちゃんのこと知ってるの!?」

過剰に反応してしまってから、私は両手で口をふさいだ。お兄ちゃんの師匠にこんなところで会えるなんて、思っても見なかった。

「あんたウイングの妹なの?」
「あ…、うん」
「ウイングが随分執心してた妹に会えるとはねえ。修行の途中なのに、妹の迎えがあるのでって言ってよく勝手に帰ってたわさ!」

ビスケはそれからお兄ちゃんの昔話を話してくれて、私は懐かしくて嬉しくて聞き入っていた。のに。
突如出現した敵にその話は中断された。しかもかなり強くて私はどう考えてもみんなの足手まといだった。ビスケは私たちに二週間以内に敵に一発でいいから攻撃を当てろと指示を出して岩山の上に行ってしまう。

どうしよう。絶対、私はあの人に攻撃を当てることなんか出来ない。だって隙が見つけられない。

ゴンとキルアは等身大の岩を使って攻撃を繰り返していて、私もそうしようと思ったけどそんな大きな岩を持って俊敏に動くことは出来なかった。
悩んでいても仕方ないと、がむしゃらに攻撃しようとして、キルアに止められた。

「おまえは俺のそばにいろ」

それは戦力外だと言われているのに等しくて。自分がこんなに弱くて足手まといだと思ってなかった私は、キルアに言われた通りにするしか出来なくて。
力がないことをこんなに悔しいと思ったのは初めてだった。
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