my dear

□my dear
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超絶美形のお兄さんはヒソカさんという名前で、もちろん200階にたどり着いたばかりの私でもその名前は知っていた。何が目的なのかと顔色を伺う。

「そんなに警戒しないでほしいなぁ」

ぺろっと舌で唇をなめ、楽しそうに笑いを抑えるヒソカさん。…挙動がおかしすぎて地球外生命体な気がしてきた。

「ボクねぇ、強い人が好きなんだ」
「私は…ヒソカさんからしたら、はるかに弱いと思います」

事実、この人の空気にふれるだけで身震いがする。私が警戒してから空気が変わってしまった。

「クク…君、ゴンやキルアと知り合いなんだろ?」
「え…?」
「ボク、あの2人とすごく仲がいいんだ。だから、警戒しなくても大丈夫」

そう言った途端、周りに春の空気が戻ってくる。気づかないうちに息を詰めていたようで、深く息を吐き出す。小鳥のさえずりが聞こえてきて、少し安心する。
行きに通った沈丁花の香が鼻をかすめて、そう言えばお花屋さんに寄りたかったんだと思い出す。この大袈裟な荷物とヒソカさんがいなければ行きたかった。
ちょうどお花屋さんが目に入ってきて、沈丁花がないか無意識に探す。

「寄っていくかい?」

さっきまでとは別人のような爽やかな笑顔。本心は読めないけど、こんなきれいな笑顔を見せてくれたのだから、寄らせてもらおう。

「寄りたいです!欲しい花があるんです」

大きな買い物袋をがさがさならしてお店に入ると、多種多様な花たちが誇らしげに並んでいた。パッと見たところ沈丁花はなさそうなので店員に聞いてみる。

「すみません。沈丁花ってありますか?」
「沈丁花は置いてないですね…申し訳ありません」

そっかと軽く考えて店員に会釈をして店を出ようとすると、ヒソカさんが見たことのない鉢植えの花を持ってきた。

「買うんですか?」
「うん、気に入ってね」

なんだかこの人はよく分からない。けっこう花が好きなのかもしれない。

買い物袋がかなりお店の空間を狭くしていたので、外で待つ。すぐにヒソカさんが戻ってきたので、目と鼻の先にある宿まで歩き始める。

「ここです」
「この宿かい?てっきり天空闘技場だと思っていたよ」

荷物を全部地面に置いてもらう。謎が深まるばかりの人だったけど、ゴンやキルアと友達みたいだしやっぱりいい人なんだろう、たぶん。

「ヒソカさん、本当にありがとうございました。とても助かりました。」
「うん。…そうだ。これ、君にあげるよ」
「え?でも、これ」
「朝顔って言うんだって。いつもは置いてないんだけど、偶然入荷したらしいよ」

ほとんどつぼみで、ただよく見ると青い花のようだった。お礼を言おうと顔を上げると、ヒソカさんはもういなかった。
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