my dear

□プロローグ
1ページ/1ページ

コンコン

ドアのノック音で本から顔をあげる。
時計を見ると夜の10時だった。

「どうぞ」

ドアが開けられ、ウイングが入ってきた。

「読書中だったかな?」
「お兄ちゃん!ううん、ちょっと休憩してたとこ」

そうと一言つぶやいてお兄ちゃんはベッドに腰かけた。なんだか暗い顔をしている。

「…お兄ちゃん、なにかあったの?」

はっとしてこちらを見つめたお兄ちゃんと目が合う。本当にどうしたんだろう。

「家を出ることにしたんだ」
「え…?」

訳がわからず、ただ呆然とした。

「○○に、伝えておきたいことがあってね」
「…なに?」

お兄ちゃんはおもむろに立ち上がると、私の手をとって椅子から立ち上がらせた。頬に優しく手をあてられ、唇に柔らかな感触があたる。

「!」

驚いて目を見開く。
すぐに唇が離された。

「○○が好きだ」

きつくきつく抱きしめられて、真っ白になっている頭を回転させようとする。

「…困らせてしまってすまない。もう、行くから」

ゆっくりと、背中に回っていた腕がはなされる。

「待って!やだ…行かないで…」

首をふるふると横にふり、泣きそうになりながらお兄ちゃんの腕をつかむ。優しくて悲しそうな笑顔を見つめる。

「○○の幸せを願っているよ」

首に鈍い痛みが走り、意識がとんで崩れ落ちた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ