魔法学校 短編
□素直な感情
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「宿題?」
図書館の隅の席でスネイプの出したレポートと睨み合っている最中、後方から尋ねるような声がした。
ドラコはその声にビクリと反応し、反射的に羊皮紙を隠す。
「そんなに驚かなくても……」
「なっ……なんだよ」
振り向いた先には、一人の少女が立っていた。肩まである栗色の髪に、丸い瞳。そしてドラコと同じ緑色のローブを纏っている。
「やっぱり雨の日って、図書館を使う人が多いのねぇ」
辺りを見回しながら、栗色の髪の少女──アロマ・ヒロインは呟く。
「…僕に何の用だ?アロマ」
「え?」
彼女の視線に堪えきれなくなり少しキツめの口調で問えば、間の抜けた声が彼女の口から漏れる。
「宿題がなかなか捗(はかど)らないから、図書館に行こうって思ったの。だけど来てみたら席が殆どうまってて、それで──
あの……隣いい?」
途中で説明をするのを諦めたのか、唐突に尋ねてきた。アロマの表情はこちらの反応を伺うようで、端からドラコを探しに来たという事実を必死で隠そうとしていた。
勿論、それに気付かない程ドラコも馬鹿ではないが、自分以外に寄り添えるような友達が彼女にはいないことを知っているドラコはボソリ言った。
「……好きにしろ。」
どうして情けをかけてしまったんだ、と自分を責めながら、ドラコは隣の椅子からカバンを退けた。
アロマは礼を言い、にこにこしながら空いた席に座った。
「言っておくが、一緒にやってやるとは言ってないからな」
「えっ?」
ドラコはいつもの「お高く止まってる」オーラを出しながらツンとした態度で言った。
「僕は隣を空けてやっただけだ。勘違いするなよ!」
「うん……わかった…」
少し間が空いた後、アロマは少し残念そうな表情を浮かべた。
アロマが来てから5分が経過した。
ドラコは自分の課題に体を向けるも、隣が気にかかって仕方が無かった。
こっそりとアロマの課題を盗み見てみたりもした。
「……魔法生物飼育学?」
『怪物的な怪物の本』を見るなり、ドラコは声をあらげた。魔法生物飼育学の授業では、散々な目にあっている。
「ええ。とっても素敵な授業なのよ」
「はっ、何が素敵なんだか僕には到底分かり兼ねないね。君も痛い目に合う前に……」
そう言いかけた刹那、今まで大人しかった本が突然暴れ始め、ドラコに襲いかかった。
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