ダレン&デモナタ 短編
□花言葉
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「わぁ、綺麗……!!」
季節は真夏。
シルク・ド・フリークが骨休めに停まった花畑で、アロマはその光景に目を奪われた。
「こんなに沢山の向日葵(ひまわり)、見たことない……」
アロマはその迫力と美しさにぽかんとしながら呟いた。
入道雲が浮かぶ青い空の下、その花畑では一面大きな向日葵が咲き誇っていた。
太陽の光が向日葵に反射して眩い程に美しい黄色を生み出している。
アロマは帽子を片手で押さえながら花畑の近くまで駆けて行った。
遠くで見ていた時は感じなかったが、近くまで来るとそれらは見上げる程に高かった。
「骨休めにはとびきり良い場所だろう?」
背伸びをして向日葵を観察しているアロマの後ろから、何の前触れもなく声がした。
そこにはサーカスのオーナー、ミスター・トールが立っていた。
「向日葵って、こんなにも背が高くなるのね……! ……なんだか貴方みたい」
白いワンピースのスカートを揺らしてくるりと振り返ったアロマはふふっ、と笑いながら言った。
それを見たミスター・トールは、優しく笑って言った。
「…こんなに美しいものと共通点があるとは、光栄だな」
ミスター・トールは自分より頭一つ低い向日葵の花を見つめ、茎をそっと手折った。
そしてしゃがんでアロマに向日葵を渡した。
「わぁ……ありがとう」
アロマは自分の顔よりも大きいであろう向日葵の花と顔を合わせ、にっこりと笑った。
「向日葵の花言葉を、知っているかい?」
「花言葉?」
急な問いかけにまごつくアロマを見たミスター・トールは黒い瞳の奥で愛しげに彼女を見つめた。
『私はあなただけを見つめる』
狂ったように鳴くセミの声を追い越して、低い声でそっと告げた。