ダレン&デモナタ 短編

□見据えたもの
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「ひゃっ!?」



アロマが小さく悲鳴を上げた時には、おれの指は鈍いザクリ、という音と共に第二関節まで思いきり切られた。


思わず足を縺らせ、後ろに倒れそうになったアロマを受け止めると、
第二関節までスッパリ切られた人差指をピンと立ててアロマの目の前まで持ってくる。



しばらくすると、彼女の目の前でみるみる断面から新しい指が生えてきた。
指は第一関節、やがて爪まで伸び、30秒もしないうちに元通りになった。


最初は怯えたような顔つきだったアロマも、指が元に戻り始めるとそれは驚きへと変化し、
最終的には笑顔になって後ろにいるおれを顔を上げて見た。



初めて出逢った時と同じ、きらきらとした笑顔で。




「コーマックさん…!」



「ははっ、びっくりしたかい?」



笑いながらそう問うと、アロマは何度も頷く。切られた指は既に灰色がかった塊となってまな板から落ちた。



受け止めた小さな体を名残惜しげに離すとアロマは落ちてしまった人参を拾い上げ、水で濯ぐ。


アロマはさっきと同じくエプロンをしていた。

それはシンプルな白いもので、それ自体での可愛らしさは一つも見受けられないが、
それを身に付けたアロマは家庭的な、何とも言えない魅力があった。



「あっ……朝ご飯、もうすぐできますから座っていてください」


振り向いて笑顔で話すアロマは、−─こんなことを言うのもどうかしてると思っているが─

……まるで新妻のようだった。



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