ダレン&デモナタ 短編

□見据えたもの
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止まない質問と握手を求める手からやっとの事で抜け出した時には、アロマはもういなかった。





ハイバーニアスに挨拶をし、今日から始まる公演に出演する事に決まったため、ひとまずトレーラーから出た。
ハイバーニアスとは長い付き合いでおれが少年だったときから世話になっている。
そのためいつもここに来ると、たとえ早朝でも快く迎え入れてくれるのだ。




*






朝になった。テントはもうすっかり張られ、辺りでは朝飯の良い匂いが漂っている。
だが今のおれはすっかりアロマを探すことに気を取られていて、そういえば朝はまだ食べていないとか、そんなちんけな事は全く考えていなかった。


トレーラーを出る時にハイバーニアスがアロマのいる場所を教えてくれたので(ハイバーニアスは、人の心を読むことができる)、恐らくこの辺だと思って食事を作るスタッフを一人ずつ確認していた。





すると、見付けた。
板の前で野菜の見比べをしているアロマがいた。一気に鼓動が速くなり、血行が良くなった気がする。
おれはゆっくりと人参を切っているアロマに近づいた。

そして──




その鋭く研がれた包丁と人参の間に指を突っ込んだ!
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