ダレン&デモナタ 短編
□恋人バカ
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「アロマさん!手伝って下さい!」
「はーい、今行きます」
「アロマさーん、スープの味、このくらいで良いですか?」
「はいはーい、ちょっと待って~」
「アロマさ… …うわぁああ!?」
「わわ… い、今 行くから…─」
公演後、四方からアロマの手助けを求める声が絶え間無く行き交う。アロマはそれを愚痴一つ溢さず優しく丁寧に指導している。
「君の愛しの姫は大変ですな…」
視線だけ横に移すと、ラーテン・クレプスリーが皮肉混じりに話し掛けてきた。
「なに、アロマはお前と違って有能だからな」
古くからの親友らしく、皮肉は皮肉で返してやる。冗談だとわかっているラーテンはニヤリとし、その場から立ち去った。
夜中に公演が終わってからおよそ2、3時間で全ての片付けが終わった。早朝になりかけの頃、シルク・ド・フリークはやっと静寂に包まれる。
「今回もご苦労だったな」
トレーラーのわたしの部屋に帰ってきたアロマを抱き締めてやると、アロマは顔をわたしの胸に(わたしの場合だと、ほぼ腹部になるが)擦り寄せる。
「……」
「…疲れているだろう?」
「まぁ、少しは…でも、ちょっと休めば大丈夫ですよ」
ふんわりと笑ったアロマをひょい、と抱き上げた。……少し軽くなったか?やはり無理をさせ過ぎたのでは……
「……どうかしました?」
険しい顔のままだんまりしているので、アロマは心配そうにこちらを伺っている。「なんでもない」とかぶりを振って誤魔化そうとするが、アロマは騙されなかった。
「隠したって無駄ですよっ」
「……参った、流石わたしの嫁だな」
「なっ!… …もう…っ」
少しからかっただけで、分かりやすく紅潮するアロマは… …
言うのもなんだが、とてつもなく愛らしい。