ダレン&デモナタ 短編

□添い寝の温度
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今日は一段とよく冷える。
テントの入り口をしっかりと閉めながらコ―マックは思った。
夏が終わり、季節はすでに紅葉の栄える秋に入ろうとしている。
しかし今夜のこの冷え込みはどう考えても冬のそれに近く、毛布をもう一枚増やしたところだ。



あいつは大丈夫だろうか。



床に就こうとした時、ふとそんなことを考えた。
『あいつ』とは、コ―マックの助手のアロマのことだ。
コ―マックは、アロマが寒さで震えていないだろうか、自分を恋しく思っていないだろうかと、気が付いたら彼女の心配事ばかり考えていた。


今日に限ってアロマとちょっとした喧嘩をしてしまい、腹を立てたアロマは枕だけを抱えてどこかへ行ってしまったのだ。




「……まぁ、すぐ戻るだろうな」




 一人そう呟き、毛布をめくったその瞬間、テントの外側から微量ではあるが足音が聞こえた。
そろりそろりと近づく音に我慢できず、コーマックはテントの入り口を開けた。



「……ひっ」


 
 案の定という言葉がぴったりのこの状況に、コ―マックは思わず苦笑した。
目の前には『見つかった』とばかりに動揺する、枕を抱えたアロマが立っていたからだ。



「家出はもう済んだのかな?」


「……」


「はぁ、どこにお邪魔してたんだ?」



「……ハンス、さん」



 問い詰められて口を開くアロマは、まるで子供のようだった。
ハンスの名を聞いた瞬間、コ―マックは全て理解したように頷く。



「また『こわい話』か……」



 手男ハンス・ハンズとアロマは兄妹のように仲が良く、頻繁にアロマはハンスの『怪談話』に身を震わせている。
そして決まってそういう日は、アロマはコ―マックにぴったりとついて眠るのだ。



「取りあえず、中に入るんだ」



 コ―マックは寒さと恐怖心で震えているアロマの背中に手を回しテントの中に入れた。






*





「あの、コ―マックさん」



「なんだ?」



「また……ケーキ買ってくれるなら、食べたこと許してあげます」



コ―マックの腕の中で、アロマは眠たげに呟いた。



「はいはい……おれが悪かったよ」

 





「今日は冷えるな」



「そうですか?私は、とても暖かいです」




 喧嘩した時のあの表情はどこへやら、アロマは冷えた体をコ―マックに擦り付けて満足そうに笑った。



自分にとって彼女はただの助手……
そう思っていたかった彼の心は少しずつ、色を変えていった。





添い寝の温度

―今夜は冷えて温かい

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