ダレン&デモナタ 短編
□チェスの代わりに
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「さぁ、お前の番だ」
泣きそうになっている私をロード・ロスは気に止める様子もなく、いつもの調子で言った。
自分の番だと分かってはいるが駒を動かしたくない。
「……駒を動かさなければ先には進めぬではないか……いやはや困った、困った」
しばらくすると、駒を動かそうとしない様子に見兼ねたのかわざと困った表情を作って私を急かす。
「もう……じゃない……」
「うん?何か言ったか?悪魔と言えどもだ、ものを伝えるときにははっきりと… … 」
まるで幼い子供に教える時の様なロード・ロスの態度に、私の普段溜めている感情が一気にあふれだす。
「もう良いじゃない!何回私をもて遊べば気が済むの?チェスが弱い事を知っててわざと手を抜いてっ… ……っ…──」
悔しくて涙が溢れだし、泣きじゃくりながら喋る私を見たロード・ロスはご満悦、といった表情を浮かべている。