□The soldier who lost King※
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No blood!No bone!No ash!

繰り返し叫んだあの光景が頭から離れない。

頭が痛い。

俺たちは王と、大切な仲間を失った。

*

「....っぁ、ふ、ん、んん....っ」
「力、抜いて下さい」
「あ、ぅ....う、ん、ぁ....っ」

もうこの行為も何度目か忘れてしまった。
八田さんは尊さんが亡くなった日から、否、十束さんが殺された日からどんどん憔悴してってたんだ。
草薙さんはどっかに行っちまうし、俺にだって今後どうすりゃいいかなんて分からない。
ただ、八田さんをつなぎとめておかないと。
吠舞羅に。
八田さんがいないと駄目なんだ。
....八田さんは吠舞羅を捨てたりしないってちゃんと分かってるけど、弱ってる八田さんを放っておく事なんか出来ない。

「はっ....あ、ぅ、ぅあ、ああっ」
八田さんの甘い声が、今は俺のものだって思える。
「....あっ、や、ぅ、ぁ、んん、ん....っは、ぁ猿....比古....っ」
それも幻想だけれど。

視界が真っ暗な中で犯されてる八田さんはどんな気分だろう。
ちゃんと気持ち良いかな。
怖いかな。
辛いかな。

目隠しして「俺を猿だと思えば良いっすよ」なんて、自分が虚しいだけだって分かってんのに。
今の八田さんを支えているのは俺だけであって欲しいのに、八田さんの中にはいつだって猿がいる。

「あっ、や、ぅ、んさ、る....っ猿、さる....お前、だけ、は....んっ、ん、はぁ、ぁ、ん」
八田さんが言いかけた言葉の続きが分かって、思わず唇を塞ぐ。

“お前だけはいなくならないでくれ”

セックスの度に八田さんが言う言葉が胸に刺さる。
それは、八田さんの紛れもない本音で。
猿が吠舞羅を裏切っても、それでも八田さんは猿を心の底では求め続けて。
ずっとずっと心の奥底で叫んでたんだ。

お前だけはいなくならないでくれ。頼む、俺を1人にしないで。

八田さんは1人じゃないのに。
俺がいるのに。
八田さんには....俺がいるのに。
ねぇ八田さん。
どうして猿なんすか。
何で俺じゃダメなんすか。
こんなに体を重ねても、俺の気持ちは伝わらないんですか。


*

「お前、夏じゃねぇのに太んねぇのな」
「....あれから、食欲沸かないんすよ」
「....まぁな」
「でも、俺らがいなきゃ、本当に無くなっちまう。...無くしませんよ、吠舞羅」
「当たり前だろ!アホ鎌本!」

あぁ、でも。
一生俺の気持ちが伝わんなくても。
こうして一番隣にいられるんなら、コレも悪くないな。
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